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厄介な呪い

六年前、世界は空前の「呪いブーム」だった。 呪術者たちは、一級からZ級の者まで、儲かって儲かって仕方ないとウハウハだった。 ───リュカも呪いをかけられたのだ。 リュカは若く美しく、魅力的で、モテモテだった。 なので、街の女達と遊びまくっていた。 入れ食い状態だったし、いくらでも貢いでくれる金持ち女がいたので働きもせず、セックスばかりしていた。 ある日、地味で鶏ガラのような女に愛を告白された。 リュカは「鏡を見て出直して来い」と、美しい愛人達と一緒に鶏ガラ女を馬鹿にして追い返した。 まさか、それが……とてつもないしっぺ返しを喰らうことになるとは、夢にも思わなかった。 女は全財産をはたいて呪術者を雇い、リュカに呪いをかけた。呪いにもいろいろある。 手足が木のようになってしまう呪いや、背骨が曲がってしまう呪い、果ては「屁とくしゃみが同時に出る呪い」など、アホらしいものまであった。 リュカの呪いは厄介だった。 リュカの体は食事を受け付けなくなった。 そして、サディストを誘発するフェロモンだかなんだかが出るようになった。 しかも、男限定で。 サディスト男に中出しされた精液が食事変わりになる体質になった。 定期的に精液を注がれなければ、生きたまま肉体が腐ってしまう。 真っ昼間に街を歩いていただけで、拉致られ、暴力と陵辱を受けるようになった。 愛人の金持ち女が上級の呪術者を連れてきて、どうにか呪いを解こうとしたが、呪いをかけた本人にしか解くことはできなかった。 更に厄介なことに、リュカはどれほどの暴力を受けても死なないのだ。 だが、肉体は破壊されていく。 痛みも感じている。 死ぬほどの陵辱を受けても、どれほどの暴力を受けても、いくら肉体がボロボロになろうとも 天寿をまっとうするまでは死ねないのだ。 その天寿が40歳なのか、90歳なのか、分からない。 「……いつまで続くんだ」 リュカは変態男に捕まり、牢獄の中にいた。ぼんやりと鉄格子越しに夜空を見ていた。 右眼を失い、顔半分は焼けただれていた。 身体中に鞭や打撲の痕があり、皮を剥がされたりと、傷が無い場所の方が少ない。 両手と両足の腱を切られて動くこともできなかった。 最初のうちは愛人達もリュカを助けようと躍起になっていたが、リュカの体に傷が増えるにつれ、少しずつ離れていった。 唯一の武器だった美しさを失っていくリュカを愛する女はいなかった。 鶏ガラ女も、自分の望んだ呪いの凄惨さに恐れ戦いて、遠い街へ逃げていった。 ───いっそ、狂ってしまえば楽なのに。 骨格標本の骸骨のようになっても、自分は死ねないのだ。早く、寿命が尽きるよう祈った。 すると、ふいに月明かりを影が覆った。

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