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緋佐塚白

文汰は頷いた白を抱き上げて、そのまま車に乗せた。車というものに初めて乗る白は、最初楽しそうにしていたが動き出した途端、隣に座る文汰に抱きついた。 「……どうした?」 「っ、こわい、おりるっ」 車がまだ走っているのに、白はドアを開けて降りようとした。しかし、鍵がかかっているのでドアが開くわけもなく。いろいろとパニックになった白を、文汰は仕方ないように自分の膝の上に乗せた。 こんなこと、文汰がするとは思わなかった白はポカンと口を開けている。怖がっていたのを忘れたように。文汰自身も、自分が何故こんなことをしたのか理解出来なかった。 うるさくもあったし、ここでドアを開けられたら自分にも危険が及ぶと思った。でも1番に思ったのは、白がここで降りれば大ケガをしてしまう。それだった。 「あの、」 「……チッ。あのな、車は怖いもんじゃねーよ。それにこれから先、お前はこれに乗るんだぞ」 「でも、部屋から出さないんじゃないの?」 「んな訳あるか。確かにお前の人生は俺が買った。だからお前は、“緋佐塚白”として生きるんだよ。ただの白は俺が買って、その俺がお前に新しい白をやるんだ」 文汰の言葉の意味を、白は全部理解することは出来なかった。でも、自分はもう“ただの白”ではなくて、“緋佐塚白”になったということは分かった。 それが白にも理解できた瞬間、胸の辺りがポワリと暖かく感じて。初めて、自分の中に新しい命を宿した時の感じに似ていて。 「あやたさま?」 「様はつけなくていい。お前は、俺の子供を産む。だから、呼び捨てで呼ぶ権利があるんだよ」 「でも今までの人は、そんなことさせなかった」 「今までの男と、俺を一緒にするな。それにもう、お前は俺以外の男の子を孕むことはねぇんだからな」 文汰は笑う。それに習って、白も笑った。 「だから、白。これからお前は、俺の言うことだけ聞いて生きればいい」 「うん。俺、あやたの言うことだけ聞いて生きるよ」 白の言葉に、さっきとは違った笑みを文汰は浮かべる。その違いに白は気づくことはなく。ただ、文汰の温もりを感じていた。

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