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自覚

文汰と一緒に“緋佐塚白”として生活を初めて、2ヶ月経とうとしている。初めてのことばかりで、白は戸惑うことも多々あったが文汰のおかげで人並みの生活は送れていた。 最近は字の勉強を初めて、文汰の漢字を書けるまでに成長した。 「白。もうちょっと、キレイに字を書く練習をしろよ」 「むー。鉛筆の力加減が難しいの。文汰は難しくないの?」 「俺は難しくなんかねーよ」 白とこうして過ごすときは、まるで子供の相手をしているように感じる。子供なんて煩わしいものだと思っている文汰だが、白と過ごすのは苦ではなかった。 出来るようになったこと、まだ出来ないこと。白はいつも、文汰にそれを報告する。出来なかったことが出来るようになった白の成長は、文汰にとって喜ばしいことだった。 「ま、子供が産まれるまでには頑張って英語を話せるようになろうな」 「英語………は無理だよ。せめて、難しい漢字にしてよ」 「最初っから諦めんな。産まれてくる子供のためにも、頑張ってみろ」 「うっ」 「最初っから諦める姿を子供に見られるのは、嫌だろ」 まだ膨らんでもいない白のお腹を擦りながら、文汰は問いかける。うぅぅっと白は唸っていたが、最後にはコクンと頷いた。 今までは、子供を産んでもそれで終わりだった。でも、緋佐塚白は違う。子供が産まれたら、自分で育てるのだ。文汰と一緒に。 元々戸籍がなかった白は、親がどんなものか何て知らない。だから、どんなに子供を産んでも自覚なんてなかった。 でも、文汰と一緒に生活をして白にも思うことがあった。こうして誰かと生活するのはいいものだと。一緒にごはんを食べて、一緒に眠って。こうしてなにかを教えてもらえることは、白にとっては幸せなことだった。 「やだから、俺頑張るよ」 「おぅ。頑張れ」 「だから文汰も。料理、頑張ろうな。この前作ってくれた目玉焼き、ほとんど焦げだったもんな」 「………料理は、お前か村田がするからいいんだよ」 「ダメ。村田さんがお休みで、俺が風邪とかだったらどうするの」 「うっ」 自分が諦めるなと言った手前、料理はやらないと文汰は言えなかった。自分も産まれる子供に、こんな情けない姿を見られたくない。 「……分かった。せめて卵焼きぐらいは作れるようになってやる」 「じゃあ俺は、英語で数字を書けるように頑張るよ」 「それ簡単すぎだろ」 いつの間にか白にも、そして子供があまり好きではない文汰に、も親としての自覚がわいてきていた。

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