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水曜日 午後九時

仕事から帰ると、恋人が床に寝ていた。 まっぱだかで、仰向けで。 思わず横に座って、彼をつまみにビールを飲み始める。 現場作業で疲れた体にすきっ腹、目の前には無防備に寝ている裸の恋人。 早速酔いが回り始めた。 ゆっくりと上下する腹、無防備な下半身まで丸見えだ、悪戯しようかな。 薄っすら開いている柔らかい唇の隙間に指を突っ込むと、微かに声を漏らして眉根を寄せた。 あ、しまった。起こしたらつまんない。 起きてる時は、ぼーっとしているか、現場仕事でついた俺の筋肉に指を滑らせながら遠回しに誘ったり、いきなり服を脱ぎだしたりする。 一日中ご飯食べずにパソコン触ってたりとか、ちょっと変わった人だけど、眠っている時はフツーの人みたいで可愛らしい。 またご飯食べ忘れて倒れたのかと心配したけど、うん、ちゃんと寝息が聞こえる。 むしろビールの缶が置いてあるから。多分単なる酔っ払いだ。 俺よりずっと年上で、大学院行ってて、何考えてるのかよく分かんないんだよな。 俺のどこが好きなんだろ? 筋肉には自信あるけど。 サイドテーブルにはグラスとビールの缶。まだ半分位残ってるから、それも飲み干した。もう温くなって炭酸も抜けたやる気のないビールが喉を通って行く。 ソファにはなぜか几帳面にバスタオルが敷いてある。 よし、推理だ。 お風呂に入って熱くなったから裸で出てきたんだろ。それで、ソファに座ってビール飲んでたら、やっぱり暑いから床に座ってみたのかな。 『あ、冷たい。』 とか言いながら寝転んで、『んー気持ちい。』、でそのままここで寝ちゃった? 実家のネコが同じことしてた気がする。 飲み終わったビールの缶を台所のシンクに置き、汗臭いシャツを脱ぎながら、バスルームに向かう。俺が出るまでそのまま寝てろよ、ってちょっと邪な気持ちで祈った。

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