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第2話
二人は向かい合って座ると、ぱちんと手を合わせた。
いただきますの声の後、それぞれの食事をとる。
雑炊をスプーンですくって食べる琳太朗の手つきは、ややおぼつかない。
「今日の、きのこづくしだけどどう?」
「……優しめの味は、する」
「出汁かな。これなら良さそうだね」
柔らかな表情の琳太朗を見て、真郷はホッと息をつく。
味覚の鈍さもあり、食事は琳太朗にとってあまり気乗りのしないものだった。
真郷の気遣いの甲斐あって、最近はやっと食べることに抵抗がなくなってきたのだ。
その後、特に多く会話もなく真郷が先に食べ終える。
一人で黙々と、ゆっくりだが確実に食べ進める琳太朗を見つめながら、口元を綻ばせた。
その視線にすぐには琳太朗が気づかないことは、知っている。
「……あ、食べ終わってる?」
「今さっきな」
「もう、食べたら先片付けてていいって言ってるのに」
そう言いながら、琳太朗は少しだけ食べるスピードを速めた。
気にしなくていいといつも言っているのに、と真郷は内心呟く。
回復し始めた頃から一人で食べると言った琳太朗。
意地でもあるのか、仕方のないことなのに遅くなることを嫌がるのだ。
一度真郷が琳太朗のペースに合わせて食べていた時に、怒って拗ねたこともある。
ただでさえ迷惑をかけているのに。
そう自嘲する琳太朗を、真郷は何度も見てきた。
「だって、琳太朗が食べてるところ見てると癒されるし。癒しの時間は長く欲しいじゃん」
「なに、それ」
唇を少し尖らせながら、頬と目元を控えめに染める琳太朗。
照れたときの顔は、いつも分かりやすい。
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