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第6話

昼食の後、真郷は部屋にこもって採点の仕事に没頭していた。 塾講師の仕事をしているが、出勤は週3か4回にさせてもらっていた。 幸いにも講師の数が足りていることと、同居人の状態について理解のある上司がいたのだ。 明日は出勤日だ、と採点を終えた答案用紙を横に避け、明日使う教材に手を伸ばした時だった。 チャイムが鳴り、玄関をノックする音が聞こえてくる。 真郷は腰をあげて玄関へと向かった。 「はい、どちら様……あれ、瀧川さん?」 「すみません、真郷さん。待ちきれずに」 がさりと買い物袋を持ち上げた瀧川。 その中には食材が多く詰め込まれていた。 「いえ、来てくださる分には構いません。どうぞ」 真郷は瀧川をリビングに通した。 瀧川は慣れた様子で食材を冷蔵庫に入れ、袋も畳んで棚にしまう。 「明日明後日と連日のご出勤と伺いました。私が出来ることなら、今日の内からさせていただこうと思いまして」 瀧川はそう言いながら振り向くと、キッチンのそばにいた真郷の姿がない。 リビングの方に視線を移せば、ソファの近くにしゃがんでいた。 「あぁ、ありがとう。明日の夜は遅くなりそうだし、今日やれることはやっておきたかったので……助かります」 真郷は滝川にそう返すが、視線は向かない。 ソファに横になる琳太朗の髪を梳き、穏やかに微笑んでいたのだ。 瀧川は二人に近づき、声を潜めて話し出す。 「よく眠っていらっしゃいますね」 「あぁ。こんなに人が近づいても、起きやしない」 「良いことですよ。以前のお姿は、あまりにも辛いものでしたから」 眠りに落ちようとすると目が覚め、やっと眠っても気配で起きてしまう。 そんな生活が琳太朗の当たり前だった。 心が落ち着かず、まともに休むことなどできなかったのだ。 徐々に安定してきて、今はよく眠れるようになっている。 「本当、穏やかな顔で眠るようになったよ……」 眠る琳太朗の額を親指で撫で、真郷は優しくキスを落とす。 琳太朗は、静かな寝息をたてていた。

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