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第15話

昼食の後、琳太朗は庭を散歩したり瀧川の手伝いで洗濯物を干したり。 体を動かして時間を過ごしていた。 少しずつ家事の手伝いをしている方が気が紛れるのだ。 未だ読書やテレビなどは見えづらいし目も疲れるため、あまり好まない。 夕食は瀧川が腕を振るって料理すると張り切っていた。 その様子を、琳太朗はソファに座って眺める。 近くにいれば、料理の音も匂いも、感じ取れた。 ある日をきっかけに、琳太朗は触覚以外の感覚が鈍くなってしまった。 その当時は何も分からないのが不安で、とにかく何かに触れていたかった。 だから、今はたくさんの事が分かるようになって、それを実感したくて。 音のない一人の空間は、好きではない。 「琳太朗さん、もう5分くらいで出来上がりますよ」 「わかりました! テーブル拭いておきますね」 拭いた後にテーブルクロスを敷き、瀧川はそこに食器を並べる。 目をひく鮮やかなパスタを見て、琳太朗はわあっと声をあげた。 瀧川と二人で席に着き、手を合わせて食べ始める。 真郷がいない日の夜だと、瀧川は一緒に食事をしてくれるのだ。 一人の食卓は寂しいことを、瀧川は知っていた。 * 琳太朗は真郷を迎える前に、ソファで眠ってしまっていた。 真郷が帰ってきたのは、11時を過ぎた頃。 静かにリビングまで行くと、瀧川が琳太朗を寝室に連れて行こうとするところだった。 「お帰りなさい、真郷さん」 「ただいま、瀧川さん」 迎えの言葉に、やっと真郷は一息つけた。 そして、琳太朗の寝顔を見て笑みをこぼす。 「寝室に……と思いましたが、いかがなさいますか?」 「俺が着替えで部屋に行くので、連れて行きます」 「畏まりました。お食事の準備をしてもよろしいですか?」 お願いしますと真郷は告げて、琳太朗を抱き上げた。 まだ軽いが、ある程度の重さを感じるようになった体。 確かにここにいると、安心できるようになっていた。

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