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第16話

ふと温もりを感じて、琳太朗は目を覚ます。 目を開けてもそこは暗く、状況が読めない。 「なに……?」 思わず口にしてしまった疑問。 不安が徐々に覚醒を促し、少し働く頭で整理がついてきた時だ。 「ごめん琳太朗、起こした?」 隣で眠りにつこうと真郷が布団に滑り込んだ時に、琳太朗は目を覚ましたらしい。 「大丈夫。ただ、ちょっとびっくりしちゃって」 「悪い……琳太朗、抱き締めてもいいか?」 少し蒸し暑い夜。 抱き合うには苦しい気もするが、琳太朗は大人しく頷く。 一瞬感じた不安は、正体が分かった今でも拭いきれていなかった。 もちろん、真郷はそれを知った上での提案をしたのだ。 「あ、真郷おかえり。ごめん、お迎え出来なくて」 「ただいま。いいんだよ、疲れたときは寝てなさい」 布団の中で、真郷は琳太朗の腰に手を回す。 琳太朗は静かに、その手の中に収まっている。 “真郷の体温だ”とちゃんと認識を強めれば、去ってしまった眠気も戻って来る気がした。 「明日は今日より早く帰ってこれるから。少し遅くはなるけど、夕飯も一緒に食べよう?」 「うん、待ってる。明日もがんばって」 「ありがとう……そうだ。次の休みさ、庭から出て散歩でもしてみようか」 真郷の言葉に、琳太朗は気の抜けたように「え?」と返した。 “庭から出る” それは、嬉しいことではあるけど、知らない世界に行く怖さもある。 「人通りの多いところまでは行かないよ。丘を降りて、海でも見に行こうかなって」 「海……!」 「初めてだろ? 人気もほとんどないから、丁度いいと思うんだ」 物心ついた頃には自由がなかった琳太朗は、海を知らない。 憧れていた場所に行けるのだと思えば、胸が踊った。 「行きたいっ。楽しみだね、真郷」 「あぁ。俺も久々だし、琳太朗と行くの楽しみだな」 そう言うと、真郷は欠伸をする。 それにつられて、琳太朗も小さく欠伸をした。 穏やかに訪れた眠気に身を任せて、二人は眠りについた。

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