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第17話
翌日、琳太朗の眠たげな笑顔に見送られ真郷は塾へと向かった。
生徒が来るまでは穏やかだったが、授業が始まってからは慌ただしくなる。
質問対応して、採点前に課題にさっと目を通して、今日の報告書を書く。
持ち帰る課題と次回の授業の教材をまとめ、鞄を持った。
他の講師に声を掛け、軽い足取りで真郷は家まで帰る。
*
「ただいまー」
そう声を張ると、ぱたぱたと琳太朗が駆けてきた。
時間は9時を過ぎ、夕飯のいい匂いのする家、出迎えてくれる恋人。
普通の幸せが嬉しくて、心に沁みた。
「おかえり、真郷。ご飯とお風呂、どうする?」
「先にご飯食べるよ、待たせたしさ」
着替えて来るねと部屋に向かう真郷に、琳太朗はややもじもじしながら笑みを返す。
何だろう、と思いつつも真郷は鳴りそうなはらに耐えながら着替える。
それからリビングへと向かえば、琳太朗と瀧川が食卓に夕飯を並べ終えていた。
美味しそうな匂いに顔を綻ばせ、真郷も席に着く。
三人で食卓を囲み、いただきますの後に真郷はオムライスを口に運ぶ。
濃過ぎないケチャップライスに、綺麗な黄色の玉子。
シンプルだけどそれが好物の真郷は、素直に「美味しい」と呟く。
瀧川はピクリとそれに反応し、琳太朗をパッと見る。
琳太朗はじっと真郷を見ていたが、首を傾げて瀧川を見つめ返した。
それを受けて、瀧川は真郷にもう一度言っていただけますか?と促す。
「すごく美味しいですよ。好きな味です」
少し疑問に思いながら真郷が素直にそう告げると、瀧川はにっこりと微笑んで琳太朗を見る。
それにつられて真郷も琳太朗を見ると、ぱあっと輝いた顔をしていた。
「美味しかった? 本当?」
「うん、本当だけど……」
「やった、瀧川さん! 美味しいって!」
そこで真郷の頭の中で話が繋がった。
単純だけれど、琳太朗が作ったものだと思うと料理さえ愛おしくなって来る。
「琳太朗、いつの間にこんなに……」
「ここまで来れたのは真郷のおかげだから……真郷のために、何かしたいと思って」
快調に向かう琳太朗の体。
自立はまだでも、それに着実に近づいて行っているのだ。
「ありがとう、真郷。これからも俺を、よろしくお願いします」
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