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第18話

「まさか料理作ってたなんてな……」 二人並んだベッドの上、真郷はしみじみと言う。 目を閉じれば夕飯の景色が思い出され、琳太朗の笑顔が浮かぶ。 あんなにも嬉しそうな琳太朗の顔はあまり見た方がない。 「瀧川さんにお願いして、やってたんだ。味は……自信なかったけど」 「すごく美味しかった。瀧川さんにも確認してもらった?」 「今までは……でも、夕飯は俺だけ」 以前瀧川が作った料理の記憶を頼りに、鈍い味覚を考慮して。 自信はないまま出したけれど、瀧川に背を押され琳太朗は自分の力だけで作り上げた。 「頑張ったな、琳太朗」 「……ありがとう。ちょっと、自信ついた」 まだ乾かしたばかりの琳太朗の暖かい髪を、真郷はくしゃりと撫でる。 すると不意に、甘い花のような香りが立った。 何だろう、とすんすんと鼻を鳴らしてあたりを確かめるように嗅ぐ琳太朗。 目の前でそれを見る真郷は、困惑して眉を下げた。 「なんか、花の匂いがする」 「あぁ、シャンプーじゃないか?」 「シャンプー……」 琳太朗ふるふると頭を降り、少し伸びた髪をなびかせる。 頭をピタリと止めると、先ほどと同じ匂いがした。 「本当だ。こんないい香りだったんだ」 「髪、傷むと悪いからって瀧川さんがいいの選んでくれてさ」 そうなんだ、と言いながら琳太朗は真郷の首筋に鼻を寄せる。 大きく息を吸い込めば、ほのかに香るボディーソープ。 そして、それに混じる別の匂い。 「……真郷の匂いがする……」 きゅ、と琳太朗は顔を寄せたまま真郷に抱きつく。 ひどく懐かしい真郷の香りに包まれ、琳太朗は“取り戻した”と確信する。 真郷は琳太朗の体が震えていることに気付き、自身の肩に琳太朗の頭を優しく押し付けた。 じわり、と何かが滲んでくる感覚。 真郷はただ黙ったまま、琳太朗の背を撫でた。

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