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第21話

「まぁ、ちょっと嫌な予感はしたけどまさかなぁ……」 翌日、体温計を見ながら真郷は苦笑いをした。 38度と示されたそれは、まさに熱の証。 琳太朗はベッドに横になりながら、少し掠れた声で「ごめん」と口にする。 目が覚めた時から服の擦れる感覚がぞわぞわとして、違和感があった琳太朗。 壁を伝いながら先に起きてキッチンにいた真郷に声をかけるや否や、琳太朗には体温計が渡された。 それを挟んですぐに真郷は琳太朗を抱え、寝室へと戻ったのだった。 「ちょっとした風邪くらいならとは思ったけど、熱まで出したか……」 「俺も、流石にびっくりしてるよ」 二人とも予想以上の結果に戸惑いがあったが、真郷はすぐに平常になっていた。 「寒くないか? 食欲は?」 「大丈夫。お腹空いてるから、ご飯食いたい」 熱の割にピンピンしている琳太朗は、ぱたぱたと布団を叩いて訴える。 食べて寝れば治る、と意外にも大雑把な考えの琳太朗。 早く治したいようで、食べる気も寝る気も満々だった。 真郷はキッチンに戻り、作りかけだった朝食を脇に置いておじやを作り始める。 そこまで具合が悪くなくても、一応常食は避けようと考えていた。 味付けがしっかりしていれば、我慢してくれるんじゃないか、と。 * 「ごちそうさまでした」 食べ終えてぱちんと手を合わせた琳太朗は、すぐにベッドに横になる。 「片付けよろしくね」と真郷に手を振り布団をかける。 真郷はそれに笑って答え、器を下げにキッチンへ行った。 そうすれば、琳太朗は部屋に一人。 シーンとした部屋の中に一人だと、落ち着かなかった。 片付けの音や外の音を取り入れようにも、微かにしか聞こえず逆に気味が悪い。 (まるで、あの部屋みたいだ……) ぼんやりとそんな考えが浮かび、ハッとして首を振る。 (違う、もう家じゃない。今は真郷と二人で、瀧川さんも来てくれて。それだけ、俺の家族は二人だけ……!) ぎゅっと目を瞑って、琳太朗は頭まで布団をかぶる。 どろどろとした眠気が琳太朗を攫うまで、そう時間はかからなかった。

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