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第22話

――… 琳太朗が目を開けると、そこは思い出したくもない“家”。 目の前には厳しい顔をした男性が立っていた。 ……その人は、父親と呼ぶはずだった人だ。 「お前は迎え入れよう……ただ、こいつは別だ。お前の籍のままにする」 「どうしてですか! 琳太朗も受け入れて下さるというお話では……」 琳太朗は幼くして父を亡くし、母と二人で暮らしていく予定だった。 しかし、そこで援助を名乗り出たのが両親の親友であった真郷の父親。 再婚すれば生活を少し楽に出来る、琳太朗に父のいない寂しさを感じさせずに済む。 そう考えた琳太朗の母は、ぐっとこらえて再婚を決意したのだった。 待っていたのは、琳太朗は受け入れないという答え。 手放すか自分で働いて育てるか、好きにしろと放り出されてしまったのだった。 親子という結びつきをつけられないまま、ただ同じ家にいる人たちというだけ。 そして、名字を変える手続きをしないままだったため、琳太朗だけがその家族から外されてしまったのだ。 「ごめんね……ごめん、琳太朗」 毎晩のように母に謝られていた、という記憶はいつまでも消えない。 真郷の父の秘書をしながら、何とかやりくりをして琳太朗を育てた。 そして、琳太朗が小学校に入学する前。 滅多に人が訪れない琳太朗の部屋に、ノックの音が小さく聞こえた。 (まだお母さんが帰って来る時間じゃないのに……) 恐る恐る琳太朗が返事をすると、遠慮がちにドアが開いた。 少し傷がついたランドセルを抱えた男の子が、そーっと部屋の中を覗き込む。 「わ、本当にいた……」 そう言って男の子は部屋の中に入り、琳太朗の目の前にちょこんと座った。 「僕、真郷っていうんだ。君が琳太朗だよね?」 それが、初めて琳太朗と真郷が出会った瞬間だった。

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