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第24話
それからというもの、琳太朗の部屋に度々真郷が訪れるようになった。
終わりの時間には瀧川が迎えにくるようになっており、琳太朗と瀧川もそこで面識を持つようになったのだ。
優しく話してくれる大人を、琳太朗は初めて知った。
「明日、小学校の入学式だね」
「うんっ。明日、お母さんきてくれるかな」
「うーん……お父さんたち、仕事なんだって。瀧川さんがきてくれるって」
そっか、と琳太朗は目線を下げる。
それを見て、真郷は明るい声で励まそうとしていた。
「夜遅くまで仕事って言ってた。だからね、夕飯は僕とお兄ちゃんだけなんだって。琳太朗、一緒にご飯食べよう?」
え……空気が抜けるような声で琳太朗が声を漏らす。
真郷と一緒にご飯が食べられる、そう思ったらわくわくしてきた。
琳太朗は先程までの寂しさを忘れ、大きく頷く。
「お兄ちゃんも楽しみにしてるんだって! お父さんたちにはナイショ、ね」
「う、うんっ……」
しー、といたずらっ子のように笑う真郷が、琳太朗には眩しく思えた。
ずっと求めていた遠い光が、今琳太朗の目の前にあるのだ。
その翌日、入学式の後に真郷の部屋に初めて入った。
夕飯までの間にここで遊ぼうと引っ張られて、琳太朗はされるがままにされたいたのだ。
そこには、真郷と似た顔の優しげな雰囲気を纏った郷留もいた。
「はじめまして、琳太朗くん。郷留です」
「は、はじめまして……さとる、さん」
「……もし、呼んでくれるなら……お兄ちゃんって言ってほしいな」
眉を下げてそう笑う郷留に、琳太朗はぽーっと頬を赤くする。
初めての響きに、優しい笑顔。
すっかり絆された琳太朗は、恥ずかしそうに「お兄ちゃん」と口にする。
にっこりと笑った郷留が、嬉しそうに返事をする。
真郷も「お兄ちゃん!」と郷留を呼び、ぎゅっと抱きつきに行く。
琳太朗は遠慮してしまったが、その体を郷留が迎えに行った。
「僕たちはちゃんと、兄弟だからね」
そう言った郷留の声は、とても穏やかなものだった。
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