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第25話
入学してから真郷は順調に友達をつくっていたが、琳太朗はその術を知らなかった。
引っ込み思案で人の顔色を伺ってしまうから、自分から話しかけられずいたのだ。
学校では変わらずに接してくれる真郷のお陰でひとりぼっちは免れているが、自分の力で獲得した友達がいなかった。
真郷と自分の差や、クラスメイトへの遠慮と嫉妬。
幼心にもそれが負担になっていたのか、琳太朗は行事のたびに体調を崩し、さらに周りとの溝が深まってしまった。
*
「真郷は、僕といて楽しいの?」
熱を出して寝込んだ時に、琳太朗は枕元に置いて見舞いに来てくれた真郷にそう尋ねた。
本当は自分のことなんてどうでもいいのに、“兄弟”というだけで構ってくれているのではないか。
おぼろげな不安に、さらに琳太朗は自分を殻に閉じ込めてガチガチにする。
「楽しいよ。琳太朗はいつもにこにこしてるから。話も聞いてくれるから、それがすっげーうれしい」
負の感情が目立ってしまうけれど、確かに人といる時に“楽しい”と感じていた自分もいる。
誰かと同じ時間を共有することが、自分の夢だったと。
その時はもう5年生になっており、小さい頃のモヤモヤは憧れが元だったんじゃないかと思うようになっていた。
友達との付き合い方を、琳太朗が自分なりに考え始めた時だった。
皆が寝静まった夜に、ノックもなしに部屋のドアを開けられる。
人の気配に目を覚ました琳太朗は、ぼんやりと浮かぶ影の顔を見て息を飲んだ。
暗い目でぼんやりと自分を見る、父親。
初めて会って以来全然見ていなかったが、その代わりように驚きが隠せなかった。
焦点の合わない目に、やつれた頬。
なんの感情も持っていないようなその顔が、一瞬で激しく歪む。
気付いた時には、頬が熱く口の中に血の味が広がっていた。
「ど、して……?」
「どうせ生きていても役に立たないんだ。俺の為になってくれるよな?」
父親は不気味に笑うと、琳太朗に暴力を振るい始めた。
会社の雲行きが怪しくなり、父親が不安定になっていた時期だった。
今までいないものとされていたが、琳太朗を気持ちを発散する相手に選んだのだ。
どうせ傷つけても、どうでもいい子供だったから。
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