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第41話

とんとんと肩を叩かれ、ぱっと琳太朗は目を覚ます。 間近には鼻先を赤くした真郷が微笑んでいた。 「ただいま。夕飯の時間だぞ?」 そう言った真郷は、くしゃっと琳太朗の頭を撫でた。 その手に擦り寄りながら、琳太朗は「おかえり」とはっきりしない音で返す。 目元をこすって起き上がる琳太朗に、真郷は手を伸ばした。 真郷に手を引かれながら、キッチンへ。 今夜は少し用事があるからと、瀧川は帰ったようだった。 「今夜はハンバーグだってさ」 「……チーズ、入ってるかな?」 「入れてくれたみたい。前期分の漢字が終わったから、そのお祝いだってさ」 やったな、と真郷は琳太朗に笑いかける。 素直に嬉しいと思う反面、まだ一年の半分を終えただけなのに……と琳太朗は複雑な気持ちを持った。 出来るたびにお祝いと言われてしまうのも、少し恥ずかしい。 「……嫌か?」 「ううん。なんか、まだ途中で……終わりは全然なのに、いいのかなって」 そう呟く琳太朗に、ふっと真郷は苦笑いを見せる。 「あのな、今日琳太朗が終わらせたのは半年かけてやる分なんだ。買った日からまだ1ヶ月もたってないんだぞ?」 「だって、俺はずっと家にいるから……」 「そう言うから、毎日のページ数だって増やした。毎日ちゃんと練習してた」 俯いた琳太朗の顔を、真郷が両手で包み込む。 ゆっくりと上を向かせて、ピタリと視線が合う。 「琳太朗、お前は頑張ってるよ。それを自分で認めてあげなきゃ」 ぐ、と琳太朗の顔が歪んだ。 じわじわと涙がこみ上げる瞳は、じっと真郷を見つめている。 「ずっと頑張ったままじゃ、いつか疲れるだろう? 外に出たいのも、働きたいのも分かる……でも、焦らないでくれ。幾つになっても、遅すぎることはないから」 「……っ、うん」 「傍にいる。ずっと隣にいるから、一緒に頑張らせてくれないか?」 真郷は琳太朗の身体を抱きしめた。 それに答えるように、琳太朗は真郷の背に腕を回す。 逸る気持ちに気付いてくれた真郷に、琳太朗は有り難さと申し訳なさを感じていた。

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