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第42話

――… 焦るなと言われても、と琳太朗は目の前の真郷の手を握って離さない。 頑ななその姿に真郷は思わず溜息を吐いてしまった。 そして、おそらく頑固な琳太朗のスイッチを押したであろう言葉を思い返していた。 “クリスマスは2人だし、仕事が早く終わるから買い物して帰ってくる” 瀧川が作れない分、出来合いのものでもいいからその日は豪華にしたくて。 夕方の帰りにそのまま買って帰れば、夜はゆっくり出来るから、と。 何の気なしにそう言うと、琳太朗はぷくっと頬を膨らませた。 そして、口を閉ざしたまま真郷の腕を掴んでいると言う状況だ。 「あの、琳太朗? その日はゆっくりしたいだろうから、俺が行けば早いかな……って」 「……俺も、連れてってよ」 「夕方から出ると、その後疲れないか?」 夜、早く寝られると寂しいんだよな、とは口に出さないまま。 真郷は琳太朗をそれとなく説得しようとする。 「俺がいると、邪魔?」 「邪魔じゃないよ」 「……面倒だって、思ってるんでしょ」 珍しくいじけた雰囲気を出す琳太朗。 慌てて真郷が否定すると、「じゃあ一緒に行こうよ」と返されてしまう。 邪魔でもないし、迷惑でもない。 (ただ、心配なだけなんだけどな……) 言ってしまえば、琳太朗は折れるだろうに。 真郷はその気持ちが押し付けであると知っているから、言葉に出来ずにいた。 「俺、やだよ。全部してもらうだけなの。一緒に出来ることはしたい。外に出るのだって、怖くないもん」 焦りでもなく、それは本心で。 それに真郷と冬の景色を見たいという、わがままも隠れていた。 それを受けた真郷は、ぐっと一瞬黙ってから考え込んだ。 「……あ、イルミネーション」 その呟きに、琳太朗が首をかしげる。 「この前行った本屋の通り、控えめだけどイルミネーションが点灯しててさ。あまり長居は出来ないけど、そこまで……デート、するか?」

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