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第43話

そして、当日。 早々に陽は落ち、暗く寒い中で真郷は家に帰る。 その最中、チラリと人通りの多い商店街に目を向けて、考えてしまう。 (ここに琳太朗を連れてきても大丈夫だろうか……) ささやかではあれど、この近辺でイルミネーションを見るならここしかない。 そうなると人はある程度集まるし、何よりクリスマスという日は街が賑わう。 勉強も家事も、琳太朗なりに頑張っているから。 それに、2人で過ごすようになってやっとクリスマスをちゃんと迎えることが出来るから。 だから、琳太朗には今日を楽しい思い出にしてほしい。 怖い思いや辛い思いはさせたくないと、真郷は真剣に思っていた。 * 「ただいま、琳太朗」 家に着いて、玄関まで迎えに迎えにきた琳太朗にケーキの箱を渡す。 中身のわからない琳太朗は、頭にはてなマークを浮かべながらも大事そうに持ってキッチンに向かった。 「先にご飯食べてから、イルミネーションを見に行こうか」 「うんっ」 「帰ってきたらケーキもあるからな」 真郷が夕飯を並べながらそう言うと、琳太朗はキラキラとした目で「本当?」と返す。 楽しげなその様子に、真郷はほっと目を細めた。 そして、2人用のオードブルを目の前に向かい合って座る。 ゆるゆると話しながら、あっという間に皿は空になってしまった。 「琳太朗、ここは片付けておくからコートとマフラーつけて待ってろ」 「っ! ありがとう、お願いね」 初めて見るイルミネーションに期待を膨らませて、琳太朗はコートに腕を通した。 着慣れないその重さと、マフラーの暖かさに口元を緩め、リビングへと戻る。 ゴミの片付けが終わり、テーブルを拭いていた真郷を見ながらちょこんとソファーに座って待つ。 その姿を横目で見た真郷は、きゅっと胸が高鳴るのを感じた。 「よし、行こうか」 布巾を干し、玄関先にかけておいたコートを羽織りながら真郷はそう告げた。 コクリと頷いた琳太朗は真郷の後ろにぴたりと張り付き、外に出る。 「うー……寒い」 「琳太朗、ほら」 雪が降ってからほとんど外に出ていない琳太朗は、その寒さにぶるりと震えた。 いくら厚着をしていても、指先が冷える。 真郷は琳太朗に手を差し出し、きつく握りしめた。 「離すなよ」 そう言われて、琳太朗は頷く。 口元をマフラーで隠していたが、確かに微笑んでいた。 繋いだ手を隠すように真郷にくっつき、琳太朗は雪景色をきょろきょろと見渡す。 そんな些細な行動にも、真郷は愛おしさが溢れてきた。

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