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第49話

それから年が明け、ようやく再会の日が訪れた。 駅まで瀧川が迎えに行っているので、ただ待つばかりの二人はソワソワとしている。 「真郷、俺変じゃない? 髪も切ったし、服もアイロンしたてのだし……」 「大丈夫だよ、そんなに心配しなくても」 そう言いつつ、真郷もしきりに前髪を触っていた。 格好に厳しい人ではないけれど、どうせ会うならきちんとした姿を見せたい。 暫く伸ばしていた髪を切り、琳太朗はより青年らしく見える。 以前より頬が丸くなったおかげで、穏やかさが増した。 この変わりようには驚くだろうな、と真郷は琳太朗の横顔を眺めながら考えていた。 * 数十分後、インターフォンが鳴り響き、二人はぱたぱたと玄関に向かう。 ドアを開けて出迎えた先には、同じように緊張した面持ちの郷留が立っている。 「……久しぶり、いらっしゃい……兄さん」 真郷がそう言うと、琳太朗が知らぬ間に繋いでいた手に力を込めた。 琳太朗は安心させるように親指で手の甲を撫でると、真郷はようやくゆるりと笑みを浮かべる。 「二人とも……本当に、大きくなったな」 「郷留お兄ちゃんも、すごく大人っぽい」 微かに涙を浮かべた郷留を招き入れながら、琳太朗はにこりと笑う。 来る前こそ緊張していたが、実際会えばすぐに解けた。 大人びた容姿の中に面影が見えて、安心出来たからだ。 リビングに移ると、瀧川が暖かなお茶を出して下がる。 兄弟3人顔を合わせるが、皆それぞれ見つめ合ったまま。 「……急に会いたいなんて、ごめんな」 「いや、来てくれてありがとう。雪も降ってる中、大変だったよな」 「ふふ、こんなに降るなんて知らなかったよ。いい景色が見られた」 びっくりした、と笑みをこぼす郷留。 皆窓の外に視線を向けて、白く染まった外を見つめる。 「先に、ずっと気になっていたことを聞いてもいいかい?」 穏やかな声で郷留は尋ねた。 「家を出た理由を、ちゃんと二人の口から聞きたいんだ。帰らない理由も……言ってくれるなら、納得するから」 真剣な眼差しを向ける郷留に、思わず真郷は視線を逸らした。 隣に座る琳太朗が気掛かりで、ちらりと視線を移す。 微かに動揺の色を見せる琳太朗の目は、まっすぐ郷留を見つめたまま。 これからも両親と関わり続ける郷留に、過去の話をするのは酷ではないか。 冷遇されていたからだとばかり思っている郷留に、本当の出来事を話すべきか否か。 予想できる理由を二人の口から言えば、それで納得してくれると言っているのなら。 本当の事は隠したまま、“あの家は辛かった”と、ただ一言言えばいい。

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