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第1章 ある男の意見7
早口に捲 し立て、肩で息をする。
するとチビは、擦りむけて赤くなった自分の手を、まじまじと見た。
「本当だ! すごいね、お手々がぜん 早口に捲 し立て、肩で息をする。
するとチビは、擦りむけて赤くなった自分の手を、まじまじと見た。
「本当だ! すごいね、お手々がぜんぜん痛くないよ!? 魔法みたい!」
「ほらな、俺の言った通りだろ。それよりも他に、怪我をしているところはないか? 膝を擦りむいたりとか……」
チビは砂が付いたままの顔で、お日さまみたいに笑った。
「大丈夫だよ、ありがとう!」
瞬間、俺はチビの笑顔に見とれて言葉をなくした。
自分の中で眠っていた五感が目覚め、灰色だった世界に鮮やかな色がつく。目の前の人間 のことを何ひとつ知らないのに、相手 のすべてが恋しくて、愛しくて堪らない。「好き」という気持ちが、止めどなく溢 れる。
ああ、そうだ。俺はこいつと出会える日を待っていたんだ。
ずっと会いたかった運命の人に――魂の番である、この世でたった一人だけのオ メ ガ と出会えたことを喜び、涙が一粒零 れ落ちる。
その気持ちをたとえるなら、もう絶対に見つからないと諦めていたジグソーパズルの最後のピースを見つけ、ひとつの美しい絵画を完成させたときの感動のようなものだった。
なぜ、世界で魂の番との出会いが奇跡と語られるのか、その由縁を身をもって知ったのだ。
かくして俺は、チビと――碓氷 日向と出会った。
ゴールデンウィークが明けると俺は、バース性の検査を受けたいと両親にせがんだ。結果、バース性が、オメガからアルファへ変化していることが判明した。
*
ちなみに俺は日向と出会い、アルファであることがわかって以降、両親を困らせる天の邪鬼になった。
誕生日やクリスマスに「プレゼントはなにがいい?」と聞かれても「いらない。なにも欲しくない」と答えるようになってしまったのだ。それでも両親は、俺がアニメやテレビのCMを見て「いいな」と無意識に口にしたものや、子供たちの間で流行 っているおもちゃをプレゼントしてくれた。もちろん誕生日を家族に祝ってもらえたり、クリスマスに一年間良い子にしていたことを褒 められるのは、嬉しかった。なによりも人からプレゼントを貰 える特別な日に胸が躍った。
だけど、すでに俺は、この世で一番欲しいものを手に入れていた。
それは両親がサンタクロースに頼み込んで、世界中のおもちゃ屋を虱 潰しに探しても、絶対に手に入らないもの。
世界中のアルファとオメガが、喉から手が出るほどに欲し、血眼になって探す唯一無二の存在――魂の番。
俺は、神さまが俺のために与えてくれたこの世でたったひとつしかない宝物を、見つけた。ん痛くないよ!? 魔法みたい!」
「ほらな、俺の言った通りだろ。それよりも他に、怪我をしているところはないか? 膝を擦りむいたりとか……」
チビは砂が付いたままの顔で、お日さまみたいに笑った。
「大丈夫だよ、ありがとう!」
瞬間、俺はチビの笑顔に見とれて言葉をなくした。
自分の中で眠っていた五感が目覚め、灰色だった世界に鮮やかな色がつく。目の前の人間 のことを何ひとつ知らないのに、相手 のすべてが恋しくて、愛しくて堪らない。「好き」という気持ちが、止めどなく溢 れる。
ああ、そうだ。俺はこいつと出会える日を待っていたんだ。
ずっと会いたかった運命の人に――魂の番である、この世でたった一人だけのオ メ ガ と出会えたことを喜び、涙が一粒│零《こぼ》れ落ちる。
その気持ちをたとえるなら、もう絶対に見つからないと諦めていたジグソーパズルの最後のピースを見つけ、ひとつの美しい絵画を完成させたときの感動のようなものだった。
なぜ、世界で魂の番との出会いが奇跡と語られるのか、その由縁を身をもって知ったのだ。
かくして俺は、チビと――碓氷 日向と出会った。
ゴールデンウィークが明けると俺は、バース性の検査を受けたいと両親にせがんだ。結果、バース性が、オメガからアルファへ変化していることが判明した。
*
ちなみに俺は日向と出会い、アルファであることがわかって以降、両親を困らせる天の邪鬼になった。
誕生日やクリスマスに「プレゼントはなにがいい?」と聞かれても「いらない。なにも欲しくない」と答えるようになってしまったのだ。それでも両親は、俺がアニメやテレビのCMを見て「いいな」と無意識に口にしたものや、子供たちの間で流行 っているおもちゃをプレゼントしてくれた。もちろん誕生日を家族に祝ってもらえたり、クリスマスに一年間良い子にしていたことを褒 められるのは、嬉しかった。なによりも人からプレゼントを貰 える特別な日に胸が躍った。
だけど、すでに俺は、この世で一番欲しいものを手に入れていた。
それは両親がサンタクロースに頼み込んで、世界中のおもちゃ屋を虱 潰しに探しても、絶対に手に入らないもの。
世界中のアルファとオメガが、喉から手が出るほどに欲し、血眼になって探す唯一無二の存在――魂の番。
俺は、神さまが俺のために与えてくれたこの世でたったひとつしかない宝物を、見つけた。
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