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第2章 それは、ずっと昔のお話で9
「確かに、あのときは、ちょっと悲しかったよ。せっかく選んだプレゼントを、気に入ってもらえなかったんだもん! でも、さくちゃんが何を好きか、どんなものが欲しいかを聞かなかった僕も悪かったし。ねえ、僕があげたプレゼント、もう捨てちゃった? それとも、他の子にあげちゃった?」
「馬鹿言うなよ!? そんなこと、するわけねえだろ!」
日向の両肩に手を置いて、朔夜は全力で否定する。
「おまえがくれたものは、全部家に取ってある! そりゃあ、好みの違いはあるけど、どれも日向が俺のために選んでくれたものだ。それを捨てたり、誰かにあげたりするわけねえだろ!?」
「ほらね」と日向はにっこり笑う。
「僕も、お母さんやおじいちゃん、おばあちゃんがくれたプレゼントは、おうちに取ってあったり、使ったりしているよ。もちろん、さくちゃんから貰ったプレゼントもね。そんな特別で大切なものを捨てられるわけがないよ。お菓子は食べちゃったけどね!」
舌を出して日向は、はにかんだ。
「なんだよ、それ」
そう言って朔夜は、へたくそな笑みを浮かべた。
「さくちゃんは僕の大切なお友達だもん。さくちゃんからもらったプレゼントを迷惑だなんて思わない、思ったことはないよ」
日向の言葉を聞いて、朔夜は鼻の奥がつんとした。胸の奥がなんだか苦しくて、泣きたくなってしまう。人からいじめられたり、意地悪をされたときに感じる不快感や息苦しさ、胸を締めつけられるような痛みとは異なる。家族や友だちといても感じない。日向だけに感じる、ほろ苦くて甘酸っぱい気持ち……。
「僕が、さくちゃんの『大事なもの』を気に入るかどうかなんて、実際に見てみないとわからないよ。ねえ、それってどんなもの? 綺 麗 だったり、可愛いもの? それとも、かっこいいもの? 原っぱの奥にあるって言ってたけど、取ってくるのに時間がかかったりする?」
目をキラキラさせて日向は、朔夜に話しかけた。
「いや、そんな奥には隠してねえから、すぐに取ってこれると思うけど」
「じゃあ、早く行こうよ。ほら、急いで!」
日向は、朔夜の手を取って急かした。
そんな日向の様子に朔夜は面食らう。
「でも、おまえ、入っちゃ駄目って……それに、先生に怒られるのを嫌がっていただろ」
「もちろん嫌だよ」
きっぱりと日向は答えた。
「怒られると悲しい気持ちになって、しゅんとしちゃうもん。でも、さくちゃんの『大事なもの』が見たいから! 僕が、光輝くんたちに着いていったりしなければ、僕もさくちゃんもお昼寝をできたし、お迎えの時間に大事なものを渡してもらえたんだよ。でしょ?」
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