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第4章 オメガバース2
じとっとした目で日向は朔夜に問いかけた。
すると朔夜は、「褒めているんだよ」と微笑むのであった。
「日向が言うようなことができたら、すっげえ便利だなって思うよ。けど、そういう力じゃねえ」
「じゃあ、アルファとオメガの人たちは、どんな力を持っているの?」
頬を膨 らませながら、日向は訊く。
朔夜は自分の胸の中心を親指でさした。
「心の力だ」
「心?」
「ああ! アルファは人の心を守る力を、オメガは人の心を癒やす力を持っているんだ」
目をぱちくりさせて日向は「それってどういうこと?」と頭を捻った。すぐに朔夜が教えてくれるものとばかり思っていたが、予想に反して朔夜は答えに窮していた。
眉を寄せ、頬を掻きながら「悪い」と朔夜は、肩を竦めて謝る。
「じつを言うと俺もこれについては、よくわからねえんだよ。言い訳にしかならねえけどさ、アルファとオメガの力について、絵本でもふんわりしたことしか描かれてねえんだ。図鑑には『この力は、現在も研究中です』な注意書きまであってさ」
「えーっ!」
これでもかと思うほどに大きく口を開けて日向は、叫んだ。
「本を書いている人たちにも、よくわかっていないってこと? 大人なのに?」
不服そうな声を出し、肩を落としている日向の態度に朔夜は苦笑する。
「大人だって、世の中のことを全部知っているわけじゃねえって。それに、今はよくわかってねえことも、十年後、二十年後、百年後にはわかるかもしれねえぞ」
「そんなに待たなきゃいけないの!? 百年後だなんて僕、よぼよぼのおじいちゃんになっているか、お墓に入っている状態だよ!」
そう叫ぶと日向は頬杖をついて何か考え事をしていた。しばらくの間、うんうん唸 って頭を悩ませえていたが、何か良いことを思いついたらしく「それじゃあ、」と切り出す。
「さくちゃんが、本を読んで思ったことを教えてよ」
突拍子もない日向の発現に朔夜は目を丸くし、人差し指で自分をさしながら「俺が思ったことを?」と戸惑いの声をあげる。
「うん! 大人の人でも、よくわかってないことなんでしょ。だったら、さくちゃんが本を読んで思ったことを聴かせてよ」
「頭の良い大人たちも、まだ研究中のことだぞ。俺なんかの意見なんて意味ねえよ。間違ったことしか言えねえって!」
両手を胸の前で降りながら朔夜は、渋い顔をする。
すると日向は「僕、正しいことが知りたいんじゃなくて、さくちゃんのお話が聴きたいんだよ」と小首を傾げる。
なんで俺の話なんか訊きたがるんだろう?
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