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第4章 オメガバース3
朔夜は日向の熱心さを不思議に思いながら、どこか自信なさげな様子で「わかった。絶対に笑うなよ」と日向に釘を刺した。
何度も首を縦に振って、日向は頷 いた。
「そうだな……アルファやオメガには、悲しんでいる人たちを励ましたり、元気にする力がある。俺は、そういうふうに思ったな」
きょとんとした顔をしてから日向は、このうえなく幸せそうに笑った。
ただ、朔夜は日向の笑顔を見ていなかった。稚拙な考えしかできない己を恥じ、自身の足先を凝視していたからだ。
「……笑いたきゃ笑えよ。自分でも、なんて馬鹿なことを言ってるんだろうって、思っているんだからさ」
「ううん、そんなことないよ! さくちゃんらしい優しい考え方だなって思う」
日向のその言葉に朔夜は顔を上げ、ほっとした表情を浮かべた。
「ところで、オメガバースについて幼稚園の先生たちからお話しがないのは、なんで? 身長や体重を測るとき、男の子と女の子で分けるけど、オメガバースの性別で分けなくていいの?」
日向の質問に朔夜は「ああ、それはな、」と相 槌 を打つ。
「俺たちがまだ小さいから。先生たちはオメガバースについて話さねえんだよ。『小学校の中学年になると習う』って兄ちゃんが言ってたぞ」
「へえ、そうなんだ」
「それと身体測定を男と女で分けるのは、二つ目の性別で分けても意味がねえからだよ」
「どうして?」と日向は訊き返す。
「なんでも俺らみたいな子供は、二つ目の性別があやふやなんだと。一応赤ん坊のときと小学校で六年生になるとバース性の検査を受ける。けど、そのときにアルファやオメガだとしても、大半は大人になる途中でベータに変わっちまうんだってさ。そんな状況で第二の性を教えたら、頭が混乱する子供が出たり、いじめが起きることを心配した大人たちが、小学校の高学年になるまでは男女の区別だけでいいってことにしたんだ。二つ目の性別も高校生になるころには、大体はっきりする。二十歳 を超えたら、バース性が変わることも早々ねえしな」
「そっか、だからアルファとオメガの人は少ないんだね!」
「そうだ。ベータの中でも突然変異で、アルファオメガになる奴や、恋人・結婚相手に合わせてアルファになったり、オメガになったりする人間もいるけど、それは、ほんっとーにごく少数だ」
「さくちゃんって、物知り博士だね! ねえ、さくちゃんはアルファなんでしょ!?」
「そうだぞ! 俺の家は兄ちゃんも、母ちゃんも、ばあちゃんもアルファだし。叢雲の親戚連中も全員アルファなんだ。普通、アルファは、アルファの男女が結婚しねえ限り生まれてこねえんだけど、叢雲の家は、オメガやベータと結婚しても必ずアルファの子供ができるんだよ」
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