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第4章 オメガバース5
「血の……?」
「ああ、刑事ドラマとかであるだろ。床とか壁についた血痕を調べるやつ。あれで、俺が誰の子かはっきりさせることにしたんだよ。結果は、おまえに話した通り。ついでに俺がオメガである理由も調べてみたら、先祖返りだってわかったんだ」
「センゾガエリ?」
「そうだ。普通は赤ん坊って、父親や母親、じいちゃん、ばあちゃんとか、いとこに顔が似たりするだろ。けど、たまにさ、もっと昔のご先祖さまに似た子供が生まれるんだ。つまり、アルファばっかり生まれる叢雲家に昔、オメガがいたことがわかったんだよ」
日向の頭を撫でるのをやめて朔夜は、自分の前髪を軽く引っ張った。
「俺や母ちゃんの髪が黒くないのも、目が灰色だったり、肌の色が白いのも、ご先祖さまの中に白人がいて、その血が濃く出たからなんだと」
「よかった……。じゃあ、親戚の人たちも、さくちゃんのことを叢雲の子だって、わかってくれたんだね!」
手放しに日向は喜び、花が綻ぶような笑みを浮かべた。
だが、朔夜は表情を曇らせたまま、「いいや、駄目だった」と首を横に振る。
「あいつらは、そんな一筋縄でいくような人間じゃねえんだよ」と唸るように言う。
「本家の連中は、俺に『病気に罹ってもいないのにアルファじゃない、気持ちの悪い子』ってレッテルを貼ったんだ。そのせいで、母ちゃんたちへの風当たりは、ますます強くなった」
「なっ、なんで!? もう結果は出ているのに、どうして……?」
「俺にもよくわからねえ。……親戚の集まりに行くと俺だけ仲間外れにされて、母ちゃんたちも、嫌味を言われる。それが嫌で、何度か集まりに行かなかったんだ。そしたら、昼も夜もひっきりなしに電話がかかってきて、大量の手紙が速達で届いた。本家の当主や親戚連中が、いきなり家に押しかけて来たこともあった……。それで母ちゃんたちの生まれ故郷である、この町へ逃げてきたんだよ」
そこまで言って朔夜は項垂れ、両手を頭にやった。
「光輝たちに言われたことがある。『川の下で拾われた子。叢雲の名字を名乗っているけど、アルファじゃない子ども』って。誰かが俺の出生について知って、噂話をしたんだ。狭い町だからさ、すぐにいろんなことが広まっちまうんだよな。ひどいときは、根も葉もない話に尾鰭 がつくし」
「でも、でも……それは、光輝くんたちが間違っているよ! だって、さくちゃんは拾われた子どもじゃなくて、叢雲のおうちの子なんだよ!? それなのに、そんなことを言うなんて、ひどいよ!」
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