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第4章 オメガバース7

 光の加減によって銀色にも、空色にも見える灰色の瞳で見つめられていると胸の奥が、切なくなる。なんだか嬉しいような、寂しいような、悲しいような気持ちになった日向は、朔夜にどう返事をしたらいいのか迷ってしまう。あくまで日向にとって朔夜は「大切なお友達」であり、恋愛対象として見たことは一度だってなかったのだから。  同じ幼稚園に通っている仲の良い男女が「将来〇〇くんと結婚するの」とか「△△ちゃんが好きなんだ」と言っている姿を目にしたことは、あるものの自分が誰かと恋愛をするなんて、夢にも思っていなかったのだ。  今にも泣き出してしまいそうな朔夜の様子を見て、日向は答えに窮した。朔夜を傷つけたくはないとは思うが、交際をするどころか、いきなり結婚の話や番になる話をされても、正直困ってしまう。  結局日向は、わざとらしく話を逸らすことしたのだ。 「ねっ、ねえ! 結婚は、式を挙げて指輪の交換をしたあとに、誓いのキスをするんでしょ。アルファとオメガはどうやって番になるの?」  一瞬朔夜は日向の様子に戸惑いの表情を浮かべた。だが、すぐに何事もなかったかのように、いつも通りの態度で日向に接した。 「それはな、オメガにヒート――発情期が来たときに、アルファがオメガの項を嚙むんだ。そうするとオメガとアルファは番になれるんだよ」 「発情期って、春になると狸さんや鹿さん、猫さんたちが結婚相手を探すことだよね?」 「ああ、結婚シーズンだな! ちなみに魂の番であるアルファとオメガは、雪の降る寒い冬に結婚することが多いんだってさ」と朔夜は活き活きとしゃべる。 「ふーん、春から夏にかけてじゃないんだね。でも、雪の降る日に結婚するのも、なんだかロマンチック!」 「そうだな! おまえと番になったり、結婚するときはおまえの家のおじさん、おばさんにも(あい)(さつ)しに行かねえと。おじさんにさ、『おまえのような奴に息子はやらん!』って言われたりするのかな!?」  明るい未来を想像して朔夜は声を弾ませた。朔夜は「もう何言ってるの、さくちゃん。いくらなんでも気が早すぎるよ!」と日向が、恥ずかしがりながら言い返してくれるのを、心待ちにしていたのだ。  しかし日向の反応は、朔夜の想像していたものとは、まったく異なるものだった。  まるで、夜中に恐ろしい化け物にでも遭遇したような表情を浮かべ、白詰草の指輪をじっと見つめていたのだ。日向は無言のまま、たんぽぽの花冠を頭から取り去り、指輪とともに朔夜へ突き返した。

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