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第4章 決意表明3

 朔夜は不思議な気持ちになった。  話をしたからといって、状況が一変したわけではないし、問題が解決したわけでもない。それでも、今まであったいやなことを日向に話したら、少しだけ胸のつかえが下りたような、喉に刺さった魚の小骨が取れたようなすっきりした感じがした。 「そんなことねえよ。日向の言う通りだ。いやなことを話したら、少しだけ、息がしやすくなった」 「よかった!」と日向はほっと息をつき、朔夜の手をふたたび握る。 「守られているだけのお姫様じゃなくて、さくちゃんが苦しんでいるときに支えられるような、背中を預けて戦える唯一無二の相棒みたいな関係になりたい! お父さんに、さくちゃんとのことを反対されても僕が強くなってちゃんとお話しをすれば、納得してもらえる。そうすれば、僕たちも駆け落ちをしないで済む。家族やお友だちと離れ離れにならないよ!」  朔夜は、日向の言葉を聞いて、胸がじんと熱くなった。  将来、日向が強いオメガになれるかどうかはべつ問題だ。  だとしても、駆け落ちをする以外の方法を、大切な人たちとこの先もともにいられる道を考えてくれた。日向の思いやりのある心が、朔夜にはうれしかったのだ。 「ねえ、さくちゃん。指切りしようよ」  ふたりは小指を絡ませた。 「大きくなったら、さくちゃんの番になれるように、結婚式を挙げられるように強くなる。もっ、もしも弱いままだったときは、僕に針千本飲ませてね!?」 「いや、おまえに、そんなひでえことはできねえって」  朔夜は、顔を青()めさせ、ぎゅっと目をつぶっている日向の姿に苦笑する。それから「ありがとな」と礼を言った。 「俺も、もっとおまえのことを守れる強い男になる。だから、愛想を尽かさないでくれよ……約束な」  ふたりは、指切りげんまんの(わらべ)歌を口ずさんだ。  ちょうど歌い終わると、だれかが草むらを掻き分ける音がする。ついで、おしゃべりをするにぎやかな声が聞こえてくる。  朔夜と日向は顔を見合わせて笑った。 「絹香ちゃんと(よう)()ちゃんだね」 「ああ、昼寝の時間が終わったみたいだな。それにしてもあいつら、ずいぶんとやかましいな。俺らがここにいるって気づくのも早いし……」 「だってふたりは、かくれんぼうの天才だもん!」 「そうだな。それじゃあ、先生に怒られるとするか。行くぞ」 「うん!」  朔夜と日向は手をつなぎ、友達の声がするほうへと走り出した。

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