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第7章 絶望と希望の二律背反14
「すごい……ありがとうございます」
「礼なんかいいって。どうせ、これも泡沫の夢なんだしさ」
「いえ、あなたにしていただいたことは――恩義は、絶対に忘れません」
朔夜は目を大きく見開いてから、眉を寄せ、切なげな顔をした。
「……さっさと行けよ、日向。俺のことは気にせず、絶対に振り返るな。出口まで真っ直ぐ走れ」
「ですが、」
「馬鹿! 少しは、俺にもかっこつけさせろよな!?」
「いったぁ!?」
朔夜は日向の額に、強烈なでこぴんを食らわせた。
「ちょっと叢雲さん! 地味に痛いんですけど!?」と日向は額を手で押さえ、恨めしげな目で朔夜のことを見た。
わざとらしく、ふんと鼻を鳴らすと朔夜は頭を掻いた。
「マジで鈍感! 少しは俺にも、花を持たせろよな。おまえの憧れたかっこいいアルファ らしいところを見せてえって思う、俺の気持ちを汲んでくれよ」
「えっ?」
「まあ……おまえからしたら、いつの話だよって感じだろうけどさ。つーか、覚えているわけねえか!? ……昔から情けねえ姿しか見せてねえし」
「あはははっ」と乾いた笑いを朔夜があげていると、日向は真剣な顔付きをして「そんなことはありませんよ」と真 摯 に答えた。
「あなたは、いつだって僕の憧れでした。今も、昔も、僕のことを助けてくれる、世界で一番かっこいいヒーローですよ」
柔和な笑みを浮かべてから朔夜は、日向に背を向けた。
「暁によろしくな。もしも、あの馬鹿にひでえことされたときは、兎卯子伝いでいいから相談しろよ。あいつの根性を叩き直してやるから! この先、一生、そんな必要がねえことを――俺の出る幕がないことを願うけどな」
「……さくちゃん……」
「日向――幸せになれよ」
朔夜の言葉を最後に、日向は出口へと続く廊下へと足を向けた。
瞬間――どこからともなく銃声がした。
何事かと思い朔夜が振り返ると、日向は手にしていた刀を落とし、地面に身体を打ちつけた。
「日向っ!?」
急ぎ、朔夜は倒れ込んだ日向のもとへと向かおうとするが、日向の倒れた地面からにゅっと触手が生えてきて、日向の身体を素早く引きずっていく。
「そう、たやすく逃げられると思ったか? 愚か者どもめ!」
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