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第8章 呪縛にかかりし者4
まさしく革命的かつ画期的な発明だ、と世界中から称賛された。
だが、オメガは一般のベータやアルファと比べても性被害に遭遇する率が高く、繰り返しレテを使う者も多かった。何度もレテを使用した者の中には、番にされたときの記憶だけでなく、生まれてから今日までの記憶をなくしてしまう者や、文字を読むことや食べること、衣服を着ることなどすべてを忘れて植物状態となる者が出てしまった。
結局、オメガやその家族による忘却のレテの被害を訴える声が大きくなり、研究者・製薬企業なども薬の使用を危険視し始めていた。日本でも薬物訴訟を求める声があがり出していた。危険薬物に指定され、使えなくなるのも時間の問題だった。
だが満月は、叢雲のネーミングと財力を駆使し、忘却のレテを日向と朔夜に使用したのだ。
普通の人間は【亡霊】である満月の力には抗えず、満月が好き勝手に記憶を書き換えても、もとの記憶を忘れ、日々の生活を過ごす。
だが、日向には、満月の力があまり効かなかった。
まだ、それほど力がついていない状態のときに、満月は自身を朔夜と偽り、日向に会いに行った。だが、すぐに日向は朔夜でないと気づき、最終的には満月の正体を暴いたのである。おまけに黒坊主としての姿を満月は見られてしまったので、日向の記憶を書き換えたのだ。
そして朔夜と番になることを望んで日向は、朔夜と情を交わした。しかし日向の病のために、朔夜との番契約は成立しなかった。オメガでありながら妊娠はできず、発情期に死ぬ可能性が高い、爆弾を内に抱えているような身体の状態だった。
それでも朔夜は、自分のオメガは日向しかいない。日向を守りたいと結婚を考えた。そして日向の母親と朔夜の両親は、ふたりの結婚を許したのだ。
ベータの男女であれば、女が十六、男が十八になるまで籍を入れられないことになっている。だが、魂の番であるアルファとオメガは、高校入学とともに籍を入れられることになっていた。
日本では魂の番であるアルファとオメガが番となることを推奨し、オメガの発情期が多発する高校生から魂の番の結婚を認めている。日向のように奇病を患っている者や成人してから番となることを約束しているオメガが、魂の番以外のアルファに犯されたり、番となるトラブルを未然に防ぐためだ。万が一そのような事件や事故にオメガが巻き込まれた際は、結婚相手であるアルファが相手のアルファを追求できる。オメガの泣き寝入りを防止でき、オメガの意識が戻らない場合も、忘却のレテを使用することができる。
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