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第10章 王子さま13
「んなこと言ったってさ、かったるいものはかったるいわけで。空手でも走らされるときがあるし。……あーあ、日向がキスでもしてくれたら、頑張れるのになあ?」
「な、何を言ってるの? 冗談はよしてよ」
自分から離れようとする日向の手首をそっと摑んで逃さないようにし、いたずらが成功した子供のような顔で朔夜は笑う。
「何も口になんて言わねえよ。けどさ、ほっぺとか、おでこくらいならガキでもするぜ? 日向はしてくれねえの?」
ゴホンッ! とわざとらしいせき払いの音がして、朔夜と日向は目を見合わせた。
「おーい、お二人さん。いちゃつくのは、人がいなくなってからにしてくれよ。おれら、まだいるぜー」
角次が頬を赤らめて気まずそうな口調でしゃべると、朔夜と日向は顔を真っ赤にして勢いよく離れた。
そんな二人の様子を角次と穣、好喜は温かい目で見ていた。
「ご、ごめんね! 僕たち、あの……!」
日向が目をグルグルさせて赤くなったり、青くなったりしているとヒューヒューと口笛を吹いて好喜が冷やかした。
「めちゃくちゃお熱いじゃん、お二人さん! ったく、もう少しでキスシーンが見れたかもしれねえのに……穣も、角次も邪魔すんなよな!?」
「えー?」と角次は間延びした返事をし、穣は赤面しながら「いや、だって――朔夜も、碓氷もオレらに見せつけようとか、自慢してるわけじゃねえし。二人の世界に入っているのをさ、そのまま放っておくのは、なんつーか……覗き見してるみてえで、いやじゃね!?」と反論する。
「それがいいんだし!」と好喜は叫ぶと日向の肩を抱いた。
「碓氷もさ、もっと朔夜とイチャつかねえの!? オレの家の姉ちゃんなんてさ、新婚だからか朝から晩まで義兄ちゃんといちゃついているぜ? キスシーンなんてなんのその。姉ちゃんは下着姿、義兄ちゃんは上半身裸でベッドで抱き合ったり、風呂にいっしょに入って身体を洗いっ子したり、さ……」と小声で話す。
「ええっ!? いや、それは、ちょっと……」と日向は火を吹き出しそうなほどに顔を赤くする。
「おい、好喜。そんなに碓氷をからかうなっつーの。困ってんだろ? つーか、それ、身内でもぜってぇ怒られるやつだぞ」
「うん、姉ちゃんにバレてボコボコにされた!」と親指を立て、好喜は決め顔をする。
「ったく、何を考えているんだか……あいつ、生粋のあほだから、あんま真に受けるなよ?」
「いや、うん。でも……」
「「でも?」」と穣と好喜は訊き返す。
「なんだか大人ってすごいね。好喜くんの家のお姉さんとお義兄さん、仲がよさそうでいいな……」
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