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第12章 アンノウン3
これ以上傍観しているわけにはいかない、と日向は飛び出す。嫌がる菖蒲の腕を摑んでいた光輝の手首を摑みあげる。
「そこまでだよ、光輝くん」
「日向、おまえ……」
憎々しげな表情で光輝は、日向のことを睨みつける。
「菖蒲ちゃんが嫌がっているのがわからない? そうやって女の子を乱暴に扱うのは、どうかと思うけど?」
「“いやよいやよも好きのうち”って言葉があるだろ。外野は引っ込んでいろよ!」
「そうだね、そういう子もいると思う。だけど、大半の女の子は乱暴に扱われるのを喜んだりしない。むしろ嫌がるよ」
光輝はブンと腕を振り、日向の手の拘束から逃れる。日向のことを指差し、がなり立てる。
「なんだよ、王さまに負けたやつが偉そうな態度をとるな!」
「僕は別に偉ぶっていないよ」
「ぼくに口答えするな! ベータにすら劣るオメガの分際で、生意気な口をきくなよ! 竹刀も木刀も手にしていないおまえなんかボコボコにしてやる!」
そうして光輝は拳を握り、日向に殴りかかった。
「日向くん!」と菖蒲の黄色い悲鳴があがる。
しかし日向は身体を横にやり、光輝の攻撃をすっと躱す。
何度も光輝は日向に殴りかかろうとするが、日向は光輝の拳や、蹴りを受けないように動く。
そんな日向に対して光輝は顔を赤くし、かっかする。
「おまえ、逃げるなんて卑怯だぞ! 腹パン一発ぐらいさせろよ!」
悔しげに歯嚙みし、地団駄を踏んでいる光輝の様子に日向は呆れてしまう。
「光輝くんって、本当むちゃくちゃ言うよね。そんなの絶対に嫌だよ」
「うるさい! 竹刀を握っていないおまえなんか、こてんぱんにしてやれるんだからな!」
こうなったらタックルをして突き飛ばしてやろう、と光輝は日向に向かって突進する。光輝は日向の道着を摑もうとする――が、日向は光輝に摑まれそうになると素早く攻撃を受け流す。
気がつくと光輝は地面に転がっていた。信じられないと瞬きを繰り返し、彼はポカーンとしていた。
「さくちゃんが剣道をできるように、僕だって空手の初歩的なことはできるよ。さくちゃんに教わっているからね」と日向は光輝の手を離し、ため息をついた。
「菖蒲ちゃん、大丈夫? 怪我はしていない?」
強張った表情をした菖蒲は自身の二の腕を両手でさすり、「はい、大丈夫です」と小さな声で答えた。
よかったと日向は胸を撫で下ろした。
そんな日向と菖蒲の姿を目にして、光輝は手元の土を摑んだ。
「ひなちゃん、危ない!」
「えっ?」
光輝は小石混じりの土を日向の顔目掛けて投げつけた。
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