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第12章 淫夢2※

 朔夜も、日向も軽く唇を触れさせるキスは幾度となくしてきた。  だが舌と舌を合わせ、互いの口内をまさぐり合う大人のキスなど一度もしたことはなかった。  朔夜はR指定の洋画で見たり、好喜がどこからともなく持ってきたAVの映像を思い出しながら日向へ口づけた。  しかしディープキスの経験がない日向は息がうまくできなくなり、キスの合間に彼の胸板を叩く。  朔夜は日向の唇を開放した。 「苦しいよ、さくちゃん……」  涙目になった日向は息切れ状態になり、か細い声で訴えた。 「ご、ごめん。悪かった……」  ――やはり、まだ番になる段階ではない。もっと場数を踏んで、少しずつ段階を経るべきだ。せめて十八になってからでないと日向の身体にダメージを与えかねないと朔夜は判断する。  床に落ちたオメガの抑制剤を無理やりにでも日向へ飲ませる。そして自分も抑制剤を飲むんだ、と今にも切れてしまいそうな理性の糸を手繰り寄せ、頭を働かせる。  大丈夫だ。錠剤は最悪口移しすればいいし、効果がないときは俺が緊急用の注射を打てばいい。保健体育の実習で抑制剤の注射の打ち方を実技でやったし、エピペンの打ち方をガキの頃に病院で習ってるんだ。誤って注射の中に空気を入れて死ぬことはない。  目線を日向から逸らした瞬間、朔夜は思い切り日向に腕を引かれる。  そのまま朔夜の視界は反転した。  朔夜を仰向けで寝かせる体勢にした日向が、朔夜の体に跨る。  熱っぽい目つきをして肌の色は全身、桃色になっている。荒い息づかいをする日向は、朔夜の履いていたスラックスのバングルを素早く引き抜いた。 「お、おい、何をするんだよ!」 「だって……さくちゃん、ぜんぜん触ってくれないんだもん……お腹の奥が疼いて……奥からいっぱい熱いのが出てきて……我慢できないのに……」 「……それは……うわっ!?」  日向はホックを器用に取り外した。チャックを下ろし、下着の中で窮屈そうにしている朔夜自身を手にする。  身体を強張らせた朔夜は顔を真っ赤にし、痛みを堪えるように歯を食いしばった。 「ねえ、さくちゃん……僕、さくちゃんのことが大好きだよ。……さくちゃんも僕のこと……好き?」  バクバクと鳴る心臓の音がうるさい、頭がクラクラすると思いがら朔夜は日向の二の腕に手をあてる。 「好きに決まってるだろ。おまえ以上の人間なんて、どこにもいない!」  ふにゃりと安心したような笑みを浮かべた日向は「よかった……」とため息をつくように言った。  下着を脱ぎ、手にしていた朔夜のものを、愛液がこぼれ落ちてくる蕾へとあてがった。クチュリと水音がする。  朔夜の硬く勃起した男性器の先端に、しとどに濡れ、性器と化したアナルが触れる。  本能的に朔夜の中のアルファは、熱く濡れた肉壺の中へ入りたいと意思表明する。このオメガの身体を好き勝手に蹂躙し、腰を打ちつけ、己の種を巻き散らしたいという欲望が雁首をもたげた。  朔夜の性器は、日向の肌に触れているだけで涙を流し、膨張して天を向いた。  それでも彼は「日向を大切にしたい」という庇護欲や「慈しみ、守りたい」というアルファの父性本能から日向に待ったをかける。 「ダメだ、日向! まだ、中を解してな……んっ!」  そうして日向は自分の唇を朔夜へ押しつけ、彼を黙らせた。 「いいの、一分一秒でも早くさくちゃんのオメガになりたいから。それにほら……」  グッと力を入れ、腰を下げればビチョビチョに濡れた蕾は、いともたやすくほころび、朔夜を熱い胎内へと招きいれる。  目を細め、身体を震わせた朔夜が「……うあっ!」と声にならない喘ぎ声を漏らす。 「僕の身体がね、僕の心と同じように……さくちゃんのことを欲しがって求めてるの……だから心配しなくても平気だよ……」 「いや、それでも……やっぱり……」  しどろもどろになった朔夜が言い訳を考えているうちに、眉を寄せた日向がさらに圧力をかけた。自分の体重と重力に従い、朔夜のペニスを奥深くまで飲み込んだ。 「あ……や……ん、ああっ!」 「うわっ!? 日向……!」  熱くぬめった中は狭く、日向の呼吸に合わせて強く締めつけて搾り取る動きと、ほどよい締めつけ感のもとで舐めしゃぶるような動きを交互に繰り返す。  オメガの発情期によって、初めてにもかかわらず日向は朔夜のすべてを受け入れた。  童貞を捨てたばかり、恋人と初めての性行為を経験する朔夜は射精してしまわないよう、我慢するだけで必死だった。 「あ、や……さくちゃ……ん、だめ……中、きもちいい……よ。……ああっ!」 「……待て、日向。たんま……んっ!」 「むり、できない……あ、あっ……や、やだ……腰、動いちゃ……やあ、気持ちいいの止まらない……! さくちゃん、そんな目で見ないでぇ……!」  普段、凛としていて清廉な空気を纏った日向が、快楽に負け、自ら足を大股に広げ、腰を上下左右に振っている。まるで朔夜の肉棒を使って自慰を行っているような光景だ。  朔夜は日向が気持ちよさそうに顔をとろけさせ、口から唾液を垂らして男とは思えない甘ったるい声で喘いだ。自らの感じるところに朔夜の勃起した男根の先をあてこねくり回し、血管の浮き出た竿で中を擦る。いつもの姿からは到底想像できない、娼婦や男娼のように淫らな姿から目が離せなくなっていた。  オメガの本能に身体を支配された日向は、魂の番である朔夜を胎内の奥まで招き、濃い精子をオメガの子宮へ届けるよう促した。  だが、その本人は朔夜に自分の痴態を見られたくないと恥じらう。  朔夜は、日向の腰を掴み、楔で最奥を貫いた。  声にならない悲鳴をあげ、日向は背をのけぞらせる。涙をこぼしながら達し、自身と朔夜の腹部に向かって青臭い白濁液を放出する。  唾液を口の端からこぼし、放心状態の日向は朔夜の肩へ頭を預けた。朔夜に甘えるように身体を密着させ、抱きついた。  我慢の限界に達した朔夜は、日向の柳のように細い腰を両手で抱き、腰を動かし始める。 「ま、まって、……とまって、さくちゃん……!」  イッたばかりで感覚が敏感になっている日向は、朔夜の腕の中でもがいた。  しかし朔夜は日向が腰を逃がそうとするのも、自分から逃げようとするのも許さない。

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