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第12章 淫夢3※

 日向が懇願しても朔夜は日向の身体を強い力で抱きしめ、下から突き上げた。  「いやだ! 日向……おまえは俺のオメガだ……俺だけのものだろ? 痛みを感じていないなら……止まることはできない」 「そんな……あんっ!? さくちゃん……ん、いや……待って! 今されたら……あ、っ……おかしくなっちゃうから……おねが……やだぁ……ああ……!」 「おかしくなれよ! 俺は……もう、とっくの昔に……おかしくなってる……! おまえに首ったけで……ほかのやつなんか、目もくれない。……誰にも……おまえのことを渡さない……渡すもんか!」  ぐっと腹に力を入れて朔夜は身を起こす。  朔夜の勃起したものの位置が代わり、日向は口元を押さえ、切なげに眉を寄せて涙をこぼした。  そのまま朔夜は日向を押し倒し、中から自身を引き抜いた。  過ぎた快楽によって全身を小刻みに震わせる日向の身体を反転させる。頭や胸をマットにつけ、腰だけを突き出すポーズをとらせる。  快楽によって力が入らなくなっている日向は朔夜のされるがままになる。飢えた獣のようになった朔夜は、呼吸をするかのように引くつき、中のテラテラとした肉を見せつけ、愛液をとめどなく溢れさせている日向の穴を凝視した。  我慢汁を出し続けている自身をあてがい、突き入れ、後ろから犯し始める。 「あ、ん……さくちゃん、さくちゃん……!」 「日向……日向……好きだ……愛してる……」 「やだ、やめて……誰か……さくちゃん……! さくちゃん、助けて!」と遂に日向は泣きじゃくり、自身を犯す朔夜に助けを求める。  しかし朔夜の頭の中は、目の前のオメガを自分の番にすることしか考えられなくなっていた。朔夜は自分の快楽を追い求めることを望み、日向(オメガ)の意思を無視する。 「なんでだよ……おまえが俺を誘ったんだろ……」  苛立たしげに朔夜は答え、日向の華奢な手首を強い力で拘束した。  親に怒られた幼い子どものように泣く日向を前にして朔夜は舌打ちをする。  次第に、彼の中で眠っていた日向への抑えきれない憎悪と怒りが、ふくらんでいく。 「そうやって、おまえは……オメガだからって被害者ぶるのか? 証拠なんてなかったんだ。おまえが満月に踊らされて嘘の証言をしなければ、俺は鬼畜なアルファにならずに済んだ。おまえなんかを助けるために雪の中でチャリを漕いだ俺がバカだった。おまえが満月に強姦されている間、俺もおまえと同じように強姦されそうになって死にかけたんだぞ……!?   なのに、おまえは俺を犯人だと主張した。心臓が止まりかけてるやつが、どうやって加害者になる? おまえのせいで、おふくろや親父に兄貴、おばさんや絹香、穣たちの信頼を一晩で失った。全部おまえが悪いんだ! それとも……俺が死んでいれば――生まれてこなければ満月に犯されることもなかったって、そう思ってるのかよ……!」 「違う! そうじゃない、そうじゃないよ……さくちゃん」 「……ふざけんな……おまえのことを……絶対に許さない……」  そして【朔夜】は目の前が真っ赤に染まるのを感じながら日向の片足を持ち上げ、中をがむしゃらに突いた。  確かに日向の自身はふたたび立ち上がり、透明な液体を出して腹部や朔夜の敷いた衣服を汚していった。  だが――「こんなのやだ! やめて……!」と朔夜との行為を拒んだ。その姿は傍から見ても恋人との性行為を楽しんでいるようには見えない。  心の底から恐怖している。桃色に染まっていた肌も今では真っ白な雪のようになっていた。  いつしか周りの景色は変わっていき、学校の体育館の備品倉庫から、まるで座敷牢のように暗く、じめじめした場所にふたりはいた。  ほの暗い場所にいる日向の手足には手枷、足枷がつけられ、じゃらじゃらと鎖の音がする。  わずかに月明かりが差す、狭い箱のような部屋の中で、【朔夜】は腰を動かした。他人ごとのように、どうして自分は、こんなひどいことを日向にしているのだろう? と日向の傷ひとつない背中を眺めていたのだ。  じょじょに日向の中が収縮し始める。掴むもののない彼は畳に爪を立てた。  射精を目前とした【朔夜】は「中に出すぞ」と日向の耳元で囁き、腰の動きを速める。 「いや……やだ……やめて……それだけは……!」  日向がいやがればいやがるほど【朔夜】は喜んだ。興奮した彼は日向のうなじへ歯を突き立てた。 「いやあ! 痛い、痛いよ……さくちゃん!」  暴れる日向の手を押さえつけ、【朔夜】は白い歯を滑らかな肌へ食い込ませる。肉食獣が草食獣を仕留めるように、ぶちんと皮膚が裂け、鉄の味がじわりと口の中へと広がっていく。 「……さく、ちゃ……」  意識を飛ばした日向を抱きしめながら【朔夜】は笑みを深めた。 「日向!」  朔夜は掛け布団をはねのけるようにして飛び起きた。  全身、冷や汗をぐっしょりとかき、呼吸は走ったときのように荒い。心臓がいやな音を立てている。  常夜灯のオレンジ色の明かりが、ぼんやりと辺りを照らしている。暗闇の中で朔夜は呼吸を整えた。カチカチと時計の秒針が動き、時を刻んだ。  二、三分後ふうっと安心したように息をつきながら「夢か……」と朔夜は、つぶやいた。額にべったり張りついている前髪を右手で、かき上げる。  まただ。日向が俺に犯され、泣いている夢を見た。  じっとりと首にかいた汗を手で拭う。下半身が濡れている感触に朔夜は言葉を失った。  悲しげな表情で涙する日向の姿が脳裏をよぎり、罪悪感や自身に対する嫌悪感、疲労感を覚える。  重い体を起こし、ハンガーにかけられたバスタオルを手にする。下着と新しいスウェットを引き出しの中から準備し、階下で寝ている両親たちを起こさないよう、慎重に階段を下りていった。  風呂場のバスケットに持ってきたものを詰め、トイレへと向かった。鍵を閉めたことを再度確認し、用を足す。  ぼうっとした頭で、いつかはあの夢のように発情期の来た日向を、有無も言わさずにレイプしてしまうのだろうか……とぼんやりした頭で考える。  発情期に陥ったオメガを目の前にすると多くのアルファは理性をなくし、オメガを犯す。大半は強引に項を噛み、番にしてしまうケースが多い。事実、そのような事件が連日連夜起きてはニュースや新聞で取り上げられている。

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