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毒を飲んだマリオネット 第17章 世にも珍しい絶世の美少女1 | 鶴機 亀輔の小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
毒を飲んだマリオネット
第17章 世にも珍しい絶世の美少女1
作者:
鶴機 亀輔
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第17章 世にも珍しい絶世の美少女1
坪
(
つぼ
)
内
(
うち
)
希
(
のぞ
)
美
(
み
)
が植中小学校に転校生としてやってきたのは、
朔
(
さく
)
夜
(
や
)
と
日向
(
ひなた
)
が小学校六年生へ進級する直前の春休みだった。
疾風
(
はやて
)
や
心
(
こころ
)
、
鍛
(
か
)
冶
(
じ
)
を始めとした新しく六年生になる子どもたちは、新しい担任がやってくるのをウズウズしながら待っていた。が……「はあ、こーちゃんのいとこぉ?」 いやそうに顔を歪ませた
絹
(
きぬ
)
香
(
か
)
が大声をあげる。 「ない。絶対にあり得ない。いくら上級アルファで、白人の血が入ってるからって、さあちゃんは平凡な見た目をした凡人野郎。おまけに
叢
(
むら
)
雲
(
くも
)
貿易会社の分家でありながら、めちゃくちゃ貧乏人なのよ。そんな男はお呼びじゃないって、すぐに振られるわ。五百円かけとく」 募金活動があるとき以外、小学校に財布は持ち込み禁止だ。 しかし問題児である絹香は校則を平然と破り、がま口型の小銭入れから五百円を出し、
穣
(
みのる
)
の机の上へ置く。
好
(
よし
)
喜
(
き
)
は、いつも自分のことを下に見て、パシリにしてくる横暴な絹香が自分の味方になってくれたことに心から感動していた。 「じゃあ、アルファである叢雲にアプローチを始めるに二千円かけとくな」 転校生が朔夜に興味を示すと思っていた
角
(
かく
)
次
(
じ
)
の側へ
衛
(
まもる
)
がつく。五百円を四枚、接着テープのついた財布から取り出し、穣へ手渡す。 これで二対二だ。 「さっすが衛! こういうとき太っ腹だな。頼りになるぜ」と角次が興奮気味に衛の背を叩く。 「ちょっと、ちょっと! こんなに出しちゃっていいわけ? 衛、今月ゲームと漫画、買えなくない!?」 好喜は衛の懐事情を心配するふりをして、角次の側につくのを阻止しようとした。 しかし衛は黒縁メガネのメガネのブリッジをクイと上げ、余裕を見せる。 「残念ながらサッカーの最中にメガネを割って、姉貴や兄貴たちから、ゲームや漫画を買うのを一切禁止されちまった。だから、たまには、こうやって散在するのもありだろ?」 「よくねえよ、バカ!」 白い長方形の形に畳まれた紙を手にした朔夜が、衛の頭をバシン! と平手打ちする。 「いってえなあ……少しは手加減してくれよ、叢雲。そんな勢いよく殴らなくてもいいだろ?」 「うるせえ、これでも手加減した。そもそも、てめえらが勝手に俺を賭けの対象にするのが悪いんだろ!」 「いやー、なんだかおもしろい話を聞いたから、ついな」 「『おもしろい話?』」と朔夜は復唱した。 「ああ、なんでも
日
(
ひ
)
ノ
(
の
)
目
(
め
)
のいとこが、この学校に引っ越してくるんだと」 「あっ、そ。興味ねえわ。つーか、マジでありえねえぞ、おまえら」 ブツブツ文句を言いながら朔夜は穣の机にあった五百円玉をすべて募金箱へ入れてしまう。 「あー!」 両頬に手をやり、大きく口を開けた好喜が、断末魔のような叫び声をあげ、涙をこぼした。 「おれらのなけなしの小遣いに、なんてことすんだ、朔夜!」と珍しく角次がキレ散らかす。 ズイッと朔夜は角次に詰め寄った。瞳孔が完全に開いた状態で責め立てる。 「うるせえぞ、角次。俺は競馬場の馬じゃねえんだよ」 「ちょ、ちょ、こっわ! ていうか馬だなんて一言も言ってないんですけど!?」 「何よ。もう少し遅れてきたら、よかったのに」 目を三角にした朔夜は、舌打ちをしている絹香と「あー、まあ……そりゃあ怒るわなー……」と遠い目をしている穣へと顔を向ける。 「穣、絹香、てめえらも同罪だからな。マジで勝手なことしてんじゃねえよ」 「だって、おもしろそうだったんだもん」 「悪ぃ、朔夜。おれじゃ止められなかったわー」 反省の色が見られない絹香、衛、好喜、角次、穣の五人に対して、朔夜は説教を食らわせた。 しかし馬の耳に念仏で誰も聞く耳を持たなかったのだ。 「あー……あったかいな。なんだかポカポカして眠くなってくる」 鍛冶は机の上へと頬を寄せた。 そんな鍛冶の後ろの席で文庫本の小説を読んでいた疾風は「おまえが居眠りするのは三百六十五日、いつものことだろ」とページを繰る。 「でも鍛冶くんの気持ちもわかるわー。だって、こんなに穏やかな天気なんだもの。お花見に行きたくなっちゃうな」 鍛冶の右隣の席に座っている心は、少女マンガの単行本を読んでいた手を止め、窓の外へと目をやる。 薄紅色の花が
蕾
(
つぼみ
)
をつけ、黄緑色をした葉芽が、そよ風に揺れていた。 ぽかぽかとした陽気は冬の凍てつくような寒さを忘れさせ、人々の気持ちまで、やわらかく解きほぐしてくれる。 残りのクラスメートは、朔夜に怒られている衛たちの様子に半笑いしたり、あきれたり、内心「うるさいな」と思いながら遠巻きにしていた。 ちなみに光輝たちのグループは、光輝のいとこである転校生のところへ行っていて留守だ。 「ったく、祝辞の添削を受けに行ってる間に、なんでそんなバカなことを始めるんだよ!? 俺が日向以外になびくわけがねえだろ!」 前年度に生徒会の副会長を務めていた朔夜は、今期の新しい生徒会長として就任した。 生徒会長になった者は入学式に祝辞を読む決まりだ。 春休み中に彼は先輩たちが書いてきたものを参考にして今年度の祝辞を書いた。そして職員室で生徒会の顧問をしている先生に添削をしてもらい、オーケーを出してもらったので教室へ帰ったら――なぜか賭けの対象にされていたというわけである。
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鶴機 亀輔
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