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第24章 ドキドキ初デート8

「……大丈夫か?」  てっきり朔夜が「なんだよ、俺の話を聞いてなかったのかよ!? ひっでえな!」と怒り出すと予想していた日向は面食らう。 「うっ、うん、大丈夫だよ。ちょっと考えごとをしてただけ」 「考えごと?」 「そう。漫画とか小説、ドラマや映画を見てきたから恋人たちが、どういうことをするのか知識としては知ってるんだ。ほら、絹香ちゃんたちがデートした話も、よく聞いてるし! だけど――僕の家は、あの通り特殊でしょ。  さくちゃんのお父さんや、お母さんみたいに仲よくデートすることは一度もない。今日デートをするのは楽しみだし、うれしいよ。でも恋人として、どんなふうに接すれば、どうやって過ごせばいいかわからないんだ。だから変なことをしちゃったときは、構わず言ってね」  鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした朔夜は「べつに、いつも衛や絹香たちと遊ぶときの延長線でいいんじゃねえか」と答える。 「ほんと? でも、それじゃ恋人になる前と変わらないよ」 「あのなあ……俺だって父ちゃんと母ちゃんがデートしてるのは知ってても、実際に見たことは一度もねえんだ。家族旅行のときも、普段も、俺や兄ちゃんがいるところでは、父親と母親の顔で接してくる。学生時代にデートしてた話を本人たちから聞いただけ」 「そう、なの?」  苦笑しながら朔夜は「おお、そうだぞ」と返事をする。「初デートなのは俺も変わらねえよ。なんていうか、おまえも、俺も一緒に過ごす時間を楽しんで、話をしたり、さっきみたいにこう……手ぇつないだりとか、子どものときみたいにハグするのを恋人として、ちょっとずつしていければいいんじゃねえのって思う」 「そっか……そうだよね。ありがと、さくちゃん」  ほっと息をつき、日向は安堵の笑みを浮かべた。 『次は虎縞、虎縞。お出口は右側です』  車内アナウンスが流れ、話を中断し、立ち上がる。  朔夜はキャップをかぶると「ほら、手、出せよ」と日向に手を差し出した。 「うん!」  元気よく返事をして日向は、ふたたび朔夜と手をつないだ。  出入り口の扉を抜けて駅へと降りる。階段を上り、改札機に切符を入れる。  日曜で人通りの多い駅構内をふたりは歩いた。  駅ビルのガラスでできた扉の前へやってきた朔夜は、銀色をしたドアハンドルを押し、日向とともに店内へ入っていった。

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