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第29話
「そんなに良かったんだ」
「ごめ、なさいっ。僕、も、よくわかんなくて……」
いつの間にこんな事に、って僕自身分からなくて。
久しぶりに人と触れ合ったからとか、優しく気持ちいいキスをしてもらったからとか。
全部ひっくるめて、あさひさんだからじゃないのかって、ぼんやりと考える。
だからこそ逆に、腰に添えられていた手が降りていくのを敏感に感じてしまって。
「いいの。言葉でも、態度でも……素直な方が可愛くて好きだよ」
その言葉に、ブワッとまた熱が高まって。
暗示をかけられたみたいに、あさひさんの言う事を飲み込んで。
「あっ、あさひさん……もっと、触って、ください」
「いいよ、どこを触って欲しい?」
「……おしりも、前も……」
どっちも、と。
手を握りしめて、顔を隠しながらそう言う。
言いたい、して欲しい、けどこんな顔見られたくない。
どろどろで、欲にまみれた顔をしているに違いないから。
僕の言葉の後、あさひさんは優しくお尻を撫でて、時々ぎゅって揉むようにして。
「柔らかいなぁ」なんて少し笑われると、つられてしまう。
*
しばらくあさひさんの両手は、僕のお尻にあって。
不意に額や頬にキスが落ちてくるけれど、肝心なところを触ってもらえていなかった。
熱はどんどん集まって、下着が濡れているのも分かる。
我慢できず腰が揺れると、あさひさんは吐息を漏らした。
「ごめんね、ずっとお預けにしてて」
「さわって、ください……お願い」
声がかすれて、切羽詰まったようになっていて。
こんなにも堪え性がなかったか、と。
普段より意地悪そうな笑みを浮かべるあさひさんを見つめながら思った。
「……俺さ、手袋変えてなくて。文弥の、直接触ってあげられないんだ」
あさひさんの挙げた片手にはめられているのは、デートのときにしていたもので。
確かに外していなかったなって思っていたら、あさひさんは僕のモノをツンツンと指先でつついた。
「だからさ、ココ。足でしてあげる」
あさひさんの言葉を、頭の中でゆっくりと処理をする。
触れないから、足で……?
手でされるより恥ずかしいと声を上げようとするけれど、もしそれで「じゃあ止める」って言われたら、と。
してもらえない事の方が辛いから、唾を飲んで頷いた。
「いい子、降りて座って」
言われた通りに降りて、開かれたあさひさんの足の間に座る。
つ、と伸びてきたあさひさんの腕。
「文弥……俺のも、ここでシて?」
あさひさんの指が、僕の唇に触れる。
この口で、あさひさんのを……
そう考えたら、じわっと涎が溢れてきて。
あさひさんのズボンのファスナーを下ろして、下着越しに触れて。
「いいんですか?」
そう問えば、肯定するみたいにあさひさんの足が僕を優しく踏みつけた。
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