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第31話

「あさひさん、もっと」 もっと撫でて、とあさひさんの手に頭をすりつける。 そうするとあさひさんは拒むことなく優しく頭を撫でてくれて。 「Good boy(よく出来ました) 本当に、言った通り頑張ってくれたね。俺、嬉しいよ」 そう言ってもらえて、ぽっと心があったかくなった。 あさひさん、嬉しいって。 よかった、僕のしたことがあさひさんの為になってる。 「あさひ、さん……」 「俺に寄りかかっていいよ。下、気持ち悪いだろうから風呂行こっか」 イったときとはまた違う、ふわふわとした快感。 あさひさんに体を預けたら、そのまま抱っこされて脱衣所へ。 ネクタイを解いてもらうと、腕はそのままだらりと落ちてしまった。 先に全て脱がせてもらった僕は、あさひさんが脱ぐのを眺める。 そして、そこで初めてあさひさんの素手をじっくりと見た。 「手、きれい」 「これが商売道具だからね。ふーちゃん立てそう? まだふわふわしてるならこのまま抱っこするけど」 「……おねがいします」 一度ぐっと手に力を込めて立とうとしたけど、全然無理。 気持ちがどんどん満たされていって、頭の中がぼんやりしていく。 あさひさんはくすっと笑ってから、僕を抱き上げて浴室に入る。 椅子に座らせてもらって、あさひさんが身体を優しく流してくれる。 そうか、頑張った後はこんな風にご褒美がもらえるんだ。 「しあわせ……あさひさん、僕。こんなに幸せでいいのかな……」 うわ言のようにそう言ってしまうと、あさひさんはシャワーを止めて僕を後ろから抱きしめてくれた。 「いいんだよ。ふーちゃんはこれから俺に大事にされて、愛されて、幸せになって……ずっと、俺の隣にいればいいんだ」 あさひさんの声が、震えていた気がする。 どうしたのかと確かめようにも、あさひさんの言葉に喜ぶ体は役に立たなくて。 「……うれしい、すき……」 あさひさんの胸に頭をすり寄せて、多幸感に身を委ねてしまった。 * 「ん……あれ?」 意識がはっきりとして、目に映ったのはあさひさんの後ろ姿。 「あ、ふーちゃん戻ってきた?」 水の入ったコップを持ってきたあさひさん。 きちんと手袋もはめていて、もういつも通りになっていた。 「僕、お風呂の記憶が……すみません」 「うん。俺、サブスペースであんなに気持ち良さそうな子、初めて見た」 僕が座らせてもらっていたソファーの隣に、あさひさんが来る。 嫌味なくあさひさんは笑ってそう言い、僕の頬を指で撫でた。 謝罪の言葉を続けようとすると、むにっと唇を掴まれる。 「何にせよ、ふーちゃんが幸せになってくれて嬉しいよ」 そう言うあさひさんは、満足げに笑っていた。

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