31 / 91
第31話
「あさひさん、もっと」
もっと撫でて、とあさひさんの手に頭をすりつける。
そうするとあさひさんは拒むことなく優しく頭を撫でてくれて。
「Good boy 本当に、言った通り頑張ってくれたね。俺、嬉しいよ」
そう言ってもらえて、ぽっと心があったかくなった。
あさひさん、嬉しいって。
よかった、僕のしたことがあさひさんの為になってる。
「あさひ、さん……」
「俺に寄りかかっていいよ。下、気持ち悪いだろうから風呂行こっか」
イったときとはまた違う、ふわふわとした快感。
あさひさんに体を預けたら、そのまま抱っこされて脱衣所へ。
ネクタイを解いてもらうと、腕はそのままだらりと落ちてしまった。
先に全て脱がせてもらった僕は、あさひさんが脱ぐのを眺める。
そして、そこで初めてあさひさんの素手をじっくりと見た。
「手、きれい」
「これが商売道具だからね。ふーちゃん立てそう? まだふわふわしてるならこのまま抱っこするけど」
「……おねがいします」
一度ぐっと手に力を込めて立とうとしたけど、全然無理。
気持ちがどんどん満たされていって、頭の中がぼんやりしていく。
あさひさんはくすっと笑ってから、僕を抱き上げて浴室に入る。
椅子に座らせてもらって、あさひさんが身体を優しく流してくれる。
そうか、頑張った後はこんな風にご褒美がもらえるんだ。
「しあわせ……あさひさん、僕。こんなに幸せでいいのかな……」
うわ言のようにそう言ってしまうと、あさひさんはシャワーを止めて僕を後ろから抱きしめてくれた。
「いいんだよ。ふーちゃんはこれから俺に大事にされて、愛されて、幸せになって……ずっと、俺の隣にいればいいんだ」
あさひさんの声が、震えていた気がする。
どうしたのかと確かめようにも、あさひさんの言葉に喜ぶ体は役に立たなくて。
「……うれしい、すき……」
あさひさんの胸に頭をすり寄せて、多幸感に身を委ねてしまった。
*
「ん……あれ?」
意識がはっきりとして、目に映ったのはあさひさんの後ろ姿。
「あ、ふーちゃん戻ってきた?」
水の入ったコップを持ってきたあさひさん。
きちんと手袋もはめていて、もういつも通りになっていた。
「僕、お風呂の記憶が……すみません」
「うん。俺、サブスペースであんなに気持ち良さそうな子、初めて見た」
僕が座らせてもらっていたソファーの隣に、あさひさんが来る。
嫌味なくあさひさんは笑ってそう言い、僕の頬を指で撫でた。
謝罪の言葉を続けようとすると、むにっと唇を掴まれる。
「何にせよ、ふーちゃんが幸せになってくれて嬉しいよ」
そう言うあさひさんは、満足げに笑っていた。
ともだちにシェアしよう!