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第39話

――… 気が付けばあさひさんとお付き合いを始めて2ヶ月程経つ。 忙しい時期を抜けて少ししたら、暑い季節から抜け出して朝晩が肌寒くなってきた。 衣替えをしても、相変わらずあさひさんの格好は綺麗で上品な雰囲気。 白い手袋が本当に良く映える。 あさひさんの変化と言えば、お風呂あがりに良く触れてくれるようになったことだろうか。 家に帰ると手袋を外すようになったけれど、その時は何となく触れようとしてもぎこちない感じがした。 風呂から上がって、寝る前のちょっとした時間にさらりと触れてくることが多い。 あさひさんの指は、直に触れるとすべすべで。 頬を撫でる手の滑りが良くて感動した覚えがある。 * 「僕2番行ってくるから、きなりくん4番お願いしていい?」 「オッケー。これ終わったら5番行く」 いつものように働いてはいるけれど、何だか最近お客さんの入りが増えた気がする。 回転は早くないのに、お客さんが出るとまたすぐ別の人が入って、となかなか絶えない。 OLに女子高生、一人で来てる男の人もいて、幅広く知られてきたらしい。 なかなか前のようにお客さんとじっくり話す時間は減ったけど、カウンターに座る人とはちょくちょく言葉を交わす。 「有明さん、ケーキこれもう一個!」 「アタシ追加でプリン食べたーい」 「コーヒーもう一杯くださぁい」 最近よく座るのは、学校帰りの女子高生。 よく食べてよく飲んで、よくおしゃべりしていく元気な子たちだ。 明るくて話もよく聞くいい子たちなんだけど…… 「付き合ってる人いるんでしょー? ねぇ、写真見せてよ」 「ダメ。カッコいいから」 「惚気ないでよぉ。取る気なんて元々無いって」 あさひさんを見せてほしいっていう気持ちがすごく大きいのがちょっと困りどころ。 勝手に見せたく無いし、お店に来た時に鉢合わせられてもなんか気まずい。 そもそも何でこんなにも短い期間で話すようになったかと言えば、彼女らのコミュニケーションの取り方がうまいからなんだろうけれど。 最初は「付き合って」なんて軽く言われてて、あまりにも真剣に断ったら気に入られてしまったみたい。 それから彼女たちの巧みな誘導で男の人と付き合っているとバレてしまったけれど、すんなり受け入れられてしまった。 拍子抜けするくらい簡単に「あー、有明さん可愛いしアリだね」なんて言われて。 あさひさん以外に可愛いなんて言われることに慣れていないから、思わず照れてしまったのを覚えている。 「もー、相手の顔はいいでしょ! みんなも早く彼氏作りなさい」 「おととい別れたばっかだし……ねぇ聞いてよ!」 そこから彼女らの話は始まる。 全力で恋して、喧嘩して、もう嫌いって別れて。 青春だなぁ、なんて口元を綻ばせてしまった。

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