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第44話(あさひ)

「やっぱり人それぞれですよねぇ……俺も道具はあんまり使わないんですよ。やるなら自分の手でって、決めているので」 爽やかにそう言うマスターを見て、苦笑いをする。 次第に何だか吹っ切れてきて、笑いが長引く。 「美作さん……?」 「いや、マスターがそう言う趣味だったんだと思うと、人って見た目によらないんだなって」 「あくまで自分の信頼した相手に対して、の顔ですから」 マスターの言った通り、信頼の上で成り立つパートナーとの関係。 この人なら俺の思いを受け止めてくれるって言う、安心感。 中には相手に拒否されて嫌がるのを好む人だっているだろうが……その根本ってマゾヒズムなんじゃないか、とも思う。 DomとSubは紙一重だって思うのが、俺にとってはしっくりくる。 甘やかしたいと思っている俺を、実はふーちゃんが甘えさせてるとしたら? そんなことを考えるのも案外面白い。 主導権がこちらと言うわけではなくて平等だと思うのは、そう考えているから。 「ふーくんのパートナーが美作さんで良かったって、ずっと思っていたんです。あの子に信頼と対等を教えてくれる、優しい人だから」 「俺も、俺のことを丸ごと受け止めてくれるふーちゃんに出会えて、良かったです。奇跡なんじゃないかって思ってて」 「運命ですよ、それが」 そう笑うマスターに、俺も笑って頷く。 きっとこの出会いは運命だって。 ふーちゃんもそう思ってくれているといいな、って考えてしまった。 「そうだ、美作さん。まだふーくんに首輪つけてないですよね?」 「えぇ。段階を踏んでからとは思ったんですけど……タイミングを逃しっぱなしで。いっそ来月の誕生日に渡そうかなと」 「いいんじゃないですか? きーくんが気にしてたんですよ。いつになったら渡すんだって」 あはは、と気まずくて誤魔化すように笑ってしまう。 あっという間にパートナー関係になってしまって、正直言って改まって話をするタイミングを逃してしまっていた。 11月の誕生日なら、面と向かってちゃんと話せるだろうと思っていた。 本来であればふーちゃんと話して決めることなのだけど、前に話題を出した時に渋っていたように思えたので深く話が出来なかった。 「俺も渡さなきゃな……気持ちが先走って言っちゃったのは、俺も同じです」 「実際本当に好きな人になんて、ぽろっと言っちゃいますもんね」 どれだけ大人になっても、その気持ちは子供のまま。 その人を腕の中に入れたいと思ったら、もう言葉を出してしまっているから。 「……ついでに言うと、好きが故に仕置をするのも俺らにとっては……」 「仕方ないですよね。そういう関係ですから」 未だにふーちゃんにお仕置きをしたことはないけど、俺らにとっては切り離せないもの。 厳しい人は割と頻繁にするみたいだけど……ふーちゃんのことはガチガチに縛ってないしなぁ。 「マスター、決め事ってどんな事にしてます?」 そう言えば人のそういうのって聞いたことないなって思って。 ちょっとした興味でマスターに聞いてみた。

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