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第45話(あさひ)
「うーん……基本のほかなら、門限も決めますよ?」
「門限!」
思いもよらない魅力的な響きに、ぱちぱちと目を瞬かせる。
「えぇ、意外と多いんですよね。夜の外出を制限する人もいますし。門限とはズレますけど、朝は自分より早く起きてほしいって人もいますよ」
「なるほど……生活をともにしている人ならではの考えですね。少し興味あります」
「仕事の後は連絡入れてから何分以内に帰ってくるように、って決めるのも面白そうじゃないですか?」
「何か昔のパシリの雰囲気も感じますけど……でも、確かに面白そうですね」
元々ふーちゃんは寄り道する子ではないけれど、買い物で長考して少し遅れることもある。
悪い訳ではないけれど、心配になるから。
軽くそんな風に縛ってみるのもありかな、と。
門限については、今後一緒に住み始めてから考えよう。
「きつすぎない制限で、破ったときにはサッとお仕置きをして。そう言う刺激は必要ですからね」
「確かに。マンネリ防止のために何か新しいことしたりってします?」
「しますよぉ。今のパートナーは少し口の悪いときがありまして。海外ではありますよね、そう言う子に石鹸を噛ませるって」
揺るがない笑顔で、マスターは穏やかにそう言った。
2人の関係のマンネリ化防止のためっていうかマスターの趣味なんじゃないのか、なんて言葉はすぐに押し込めた。
最悪俺の口にも石鹸を突っ込まれかねない。
「あの子どうやら、身体への痛みはたくさん受けてきたらしいので。痛いだけじゃない罰も教えたいなって」
「あぁ、そう言うことだったんですね」
「まぁ私の趣味でもありますけど」
カラッとそう笑ったマスター。
少しでも感動した俺の気持ちはどこに収めればいいんだろう……
もやっとしつつも、ふと思う。
気付けば付き合い始めてからしばらく経っていて、未だに罰らしい罰もしていない。
プレイだっていつも似たり寄ったりで回数も多くない。
今日のマスターとの話を機に、挑戦してみるのもありか……?
うーん、と顎に手を添えるとマスターがそれに気付く。
「何かひらめきそうですか?」
「ちょっと、挑戦でもしようかと」
「いいですね。たまには美作さんも甘えたみたらどうですか?」
「……あまえる……」
「まぁ、お強請りですよ。ふーくんに頑張ってもらうんです」
ふーちゃんに頑張ってもらう……
は、と思いついた事があった。
そうと決まれば、あとはふーちゃんに相談するのみ。
丁度よくスマートフォンが音を立て、髪を切り終わったと言う通知が見えた。
「お迎えですね。じゃあ、健闘を祈ります」
にこやかに送り出してくれるマスターにお題を渡し、ふーちゃんを迎えに行く。
まだ確実にやれるかどうか分からないけれど、期待で胸がいっぱいで。
ふーちゃんを迎えに行く足取りは、やけに軽かった。
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