46 / 91

第46話

スースーと風を感じる首に手を当てると、今まであった髪の毛は綺麗さっぱり無くなっていた。 美容院のガラスに反射する自分をチラッと横目で見て、にまにまとした。 髪を切ってすぐは、楽しくて鏡やガラスに映る自分を何度も見てしまう。 あさひさんを待つ間も、ドキドキとしながらなれない髪をいじっていた。 「ふーちゃん! お待たせ」 爽やかな声が届いて振り返れば、ぱあっと笑顔を向けるあさひさん。 「かわいい……さっぱりしてて、似合う、可愛い」 「えへへ、ありがとうございます」 思わず照れながらそう言うと、あさひさんは僕の手をキツく掴んだ。 「早く帰って抱きしめたい」と堪らない顔で言うから、恥ずかしくなる。 僕の手を引いて先を歩くあさひさんは、時折ちらりと振り返って口元を緩ませる。 何度もそれを繰り返し、少し呆れ始めた頃にあさひさんのアパートに着いた。 リビングに入るとすぐ、あさひさんは僕の項をするりと撫でる。 それからぎゅっと腰を抱いて、僕の肩に頭を埋めた。 「もう、可愛い。長い時より、可愛く見える。前髪も短いから、顔もよく見えるし」 顔を上げたあさひさんは、まじまじと僕の顔を見た。 頬を染めたあさひさんはそう言うと、僕の鼻先にキスをする。 前よりもクリアになった視界で、あさひさんの顔を見つめる。 やっぱりカッコいいなと、そう思ってしまう。 ぽっと恥ずかしくなるのを誤魔化すように、僕はあさひさんの唇の少し下にキスを返した。 「……ふーちゃん、今日さ。俺からお願いしてもいい?」 「は、はい。いいですよ」 「ありがとう……ちょっとさ、やってみたい事があるんだ。夕飯の後、時間ちょうだい」 熱を帯びたあさひさんの瞳。 それだけで、なんとなく分かってしまう。 ぞわりと広がる期待を抑え込みながら、ゆったりと二人で時間を過ごしていった。 * 「お風呂ありがとうございます」 「はーい。あ、セットしてない髪も可愛い」 何もしていない髪はぺたんこだけど、さらさらと指通りが良かった。 僕の髪を触りながら、柔らかいねとあさひさんが微笑む。 穏やかな顔も、束の間。 すっと細めた目に熱がこもって、あさひさんの口がかぷりと僕の首に噛み付く。 そのまま舌で舐め上げられると、ふるりと腰が震えた。 やっぱり、そう言う事だ。 「ふーちゃん、いい?」 「……はい」 「いつものと……あと、してほしい事があるんだ」 テーブルの上に置かれているのは、痛くない手錠と…… 「目隠し?」 「うん。最初はしないけど、後でね。大丈夫? 嫌だったら言って」 目隠しなんてした事がないから、少し不安だった。 でも、あさひさんなら怖いことはしないはず。 「嫌じゃないです。でも、少し不安で……」 「少しでもダメだって思ったら、セーフワード言って。怖がらせたいわけじゃないから」 その言葉に安心して、僕はあさひさんに身を任せることを決意した。

ともだちにシェアしよう!