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第70話
あさひさんに褒められて、存在を認めてもらえた。
やっと僕に戻れたことで得られた安心感もあるけれど……やっぱり、気がかりな事には変わらない。
「あさひさん」
「ん、なぁに?」
「僕、このまま許してもらうのは違う気がして……だから、お願いします……お仕置き、してください」
僕がそう言うと、あさひさんは勢いよく顔を上げる。
ぱちくり、と驚いた顔で僕を見つめるあさひさん。
「このままじゃあさひさんに甘えてばかりだから……ちゃんと、叱ってください」
どんな返事が来るか不安で、布団を握りしめる。
こんなことを言ったら引かれてしまうだろうか。
お仕置きして欲しいだなんて、はしたないと思われるだろうか。
あさひさんの返答を待っていると、ゆっくりと頬を撫でられ、優しく問いかけられた。
「……身体は平気? ふーちゃんがして欲しいって言うなら、いいよ」
「あさひさんに褒めてもらったから、大分楽です」
お願いします、とあさひさんの耳元に口を寄せて答える。
あさひさんは「よし」と言ってにまりと笑い、僕の身体を持ち上げる。
「先にお風呂に行くよ。お互いに、綺麗にしてからね」
「……っ、はい」
脱衣所に着いて下ろしてもらい、お互いに服を脱ぎ始める。
そこで始めて、僕は自分の身体に残る痕跡に気が付いた。
手首の縛られた跡と、鏡に映った赤く腫れた頬。
くるりと背中を見れば、幾つものミミズ腫れが目に入る。
さっと血の気が引くのが自分でも分かった。
「……入ろっか。俺が身体流してあげる」
多くは言わずにあさひさんは浴室に入り、暖かいシャワーをかけてくれた。
髪も身体も、あさひさんにされるがまま優しく洗ってもらう。
「今日は手首には何もつけないでおこうね。たまには趣向を変えてみなきゃ」
「……はい」
「どんなふうにお仕置きするか、決めていい?」
シャンプーを流し終えた頃、あさひさんが心配そうに尋ねてきた。
その問いに首を縦に振って応えると、あさひさんは柔和に微笑む。
「じゃあ、今日は素直になること。良いも悪いも、全部言うこと」
約束出来る?とあさひさんは笑ったまま僕の顔を覗き込んでくる。
そんな事でいいのかと言いそうになるけれど、『全部言う』のハードルが高いことに気がついて、素直に頷いた。
まるで「いい子」と言ってくれているかのように優しくおでこにキスをして、あさひさんは僕の身体を抱き寄せた。
「お仕置きだもん、名一杯可愛がってあげるからね」
その言葉だけで、身体の熱がぐっと上がっていった。
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