72 / 91
第72話(あさひ)
「後ろ、指入れるからね」
パチリとディスポタイプの手袋を鳴らしながら手に着けて、人差し指をふーちゃんの中にゆっくりと入れていく。
ふるふると震える身体が可愛くて、思わず笑ってしまった。
ふーちゃんから漏れ聞こえる声が、加虐心を誘ってくる。
「ふーちゃん、指慣れてきた? 動かして……増やして、ゆっくり解してあげるからね」
背中の傷に唇で触れると、ふーちゃんから甘えたような声が聞こえてきた。
気持ち良くて、少し痛くて、熱が集まっていている身体。
指を動かす度に水音が増している様子を見ると、ちゃんと快感を拾ってくれているらしい。
こんな時、ふーちゃんの顔が見えないのが残念だ。
「……うん、そろそろいいかな」
「い、れて………ください」
顔を横に向けて、ちらりとふーちゃんが視線を送ってくる。
耳まで真っ赤にして言葉でも誘うふーちゃん。
愛おしさが溢れそうになって唇を噛む。
誤魔化すように俺の先だけ当て、ふーちゃんの腰を撫でた。
くすぐったそうに腰をくねらせて、息を漏らす。
しばらく続けていると、不思議そうにふーちゃんは視線を向けてきた。
「いれて、くれないんですか?」
「んー? ふふ、かわいいね」
焦ったそうに緩く腰を振るふーちゃん。
一応お仕置きだし、やってみたいことを口にしてみる。
「そんなに欲しいなら、自分で挿れてみて」
待ってるから、なんて言って。
ふーちゃんが目に涙を浮かべて恥ずかしがる姿を見ていると、ゾクゾクしてくる。
前に向かい合って座ってした時にも、自分で挿れてもらったなぁなんて。
あの時も目隠しをして俺の顔が見えない中で頑張ってくれていた。
不安と期待がごちゃ混ぜになった気持ちで、それでも快感が欲しくて欲に忠実になるふーちゃんがなによりも好きだ。
ふーちゃんの両脇に手をついて、真っ赤になっている耳に口を寄せる。
「ね、出来るでしょ?」
ゴクッとふーちゃんの喉が鳴る。
すると徐々に俺のモノが熱に包まれていく。
「……っ、ひ……あ、あっ」
「いいよ……上手」
俺の言葉に口元を緩ませて、薄く微笑んだふーちゃん。
まだ入り切っていない分も全部入れようと、ふーちゃんはゆっくり腰を進めていく。
ピタリとお互いの足が触れ合い、そこでふーちゃんは「あっ」と声を出した。
「いま、全部?」
「うん。ちゃーんと入った」
安心したのかふーちゃんは腕をかくりと折り、上半身をベッドに沈めた。
腰だけを突き上げる姿勢になって、微かに弾んだ呼吸を繰り返す。
「……ぼく、頑張れました?」
吐息の間に小さく尋ねるふーちゃん。
あぁ、もう。
この子にはどれだけ言葉を尽くしても、この思いの一抹しか伝わらない。
ふーちゃんの髪に口付けて、投げ出された手に俺の手を重ねる。
「Good Boy 最後まで自分で出来て偉いね。ご褒美をあげなきゃ」
ともだちにシェアしよう!