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第73話(あさひ)

ぐい、と腰を押し出すと、ふーちゃんが小さく声を上げる。 ぴったりと中に収まった熱で溶けあって、ふーちゃんと一つに混ざり合う感覚。 緩やかに抽送を続けるうちに、ふーちゃんからは艶っぽい声が断続的に聴こえてくるようになった。 「……っ、気持ちいいの?」 「は、い……きも、ち……ぃ、あっ、あ!」 肌を薄くピンクに染めて、素直に言葉を紡ぐふーちゃん。 可愛いなぁ、なんて思うのと同時に虐めたくなる。 スピードを速めたらどんな声を出すかな、なんて。 期待しながら動いていたら、突き上げる度にふーちゃんの声が漏れる。 声の感覚がどんどん短くなって、間に吸う呼吸も一瞬になって。 びくっとふーちゃんの背中が波打ち、鼻から抜ける唸り声が甘えているように聞こえる。 俺の手は、最初はふーちゃんの腰に添える程度だった。 でも今はちゃんと力を込めて持ち上げて、ふーちゃんの姿勢を支える役目をしている。 自分の上体もあげられなくなったふーちゃんは、ベッドに額を押し付けていた。 「ぁ……あさひさん、ごめんなさい。僕、勝手に先に……い、ひぁっ!?」 「ん? ……あぁ、イっちゃったんだ」 達した後の余韻も醒めないうちに、また抽送を始める。 「ほら、もっと腰上げなきゃ」 ぐっと半ば強引に引き上げると、少し痛がるような声が聞こえた。 やり過ぎたか、と思って一瞬止まるとふーちゃんが健気に「ごめんなさい」なんて溢して。 「痛くないです、っあ……平気、です……」 逆さぎこちないけれど、ちらりと覗かせた横顔は少し微笑んでいた。 だから、その言葉を信じた。 * バックのまま突き続けて、ふーちゃんはあの後二回くらい達してしまって。 俺もその後一度ふーちゃんの背に出して、再び始めようとしていた。 ふーちゃんの背後をとって、無茶苦茶に突いて。 恥ずかしい言葉でもかけてあげようかなんて思ったけれど、そんな余裕すらない。 この白い背中に赤い傷を這わせた奴への怒りが増すばかりだ。 俺の文弥なのに。 俺が二度と傷つけないように、今まで大切に傍に置いてきたのに。 迎えに行ったらボロボロになっていて。 傷と涙でぐちゃぐちゃになった姿を見て、自分の不甲斐なさと断りなく人の恋人に手を出す奴に腹が立つ。 この苛立ちは、どこにぶつけたらいい? ふーちゃんを怖がらせないように、言わなかった。 言葉に出来ないこの気持ちが、いつまでも整理されないまま腹の中に溜まっていく。 「まって、あさひさん。ぼく……も、ムリです……いや、あぅ……っう、う、だめ」 ぐるぐると思考している中でくぐもった声が聞こえて、ハッとした。

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