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ちひろさんときなりの話(きなり)

俺の首元にあるのは、生成色のcollar。 千博さんがくれた所有の証。 パートナーになってからと言うもの、体調は安定してきている。 以前はささくれやすかった心が落ち着いてきているのも感じているところだ。 休みの日には千博さんが家に来てくれて、ただ時間を過ごしたり、仕置きも稀にあったり。 以前喧嘩して黙って石鹸を持ってこられた時は、流石に素直にならざるを得なかった。 痛いことより、変化球の方が苦手だ。 千博さんは仕置きをきちんとやり切れば優しく褒めてくれるし、こっちがやめてくれと言うまで甘やかす。 この人むしろ尽くしたい側なんじゃないかってくらい、細やかなcareをしてくれる。 ……正直、それに気付くのはいつもサブスペースから戻ってきてからなのだけれど。 不意に気になることを思いついて、俺は今日も部屋に来た千博さんに問いかける。 「……ねぇ千博さん」 「ん?」 「俺さ、サブスペース中ってどうなってんの?」 それは本当に、素朴な疑問だった。 千博さんのrewardの後は、よく記憶が無くなる。 きっとサブスペースに入っているのだが、自分がどうなっているのか分からない。 醜態を晒していないか、ただそれだけが気になっていた。 「あー…最近入りやすいもんな」 「っ、うっせ。で? なんか……その、俺、変なことしてないよな?」 「……さぁ? 変なことはしてないと思うけど」 にまり、と笑みを浮かべる千博さん。 この人はオフになると急に面倒臭くなる。 俺の言葉をひらりとかわして、最終的に俺が追い込まれるんだ。 「急にどうしたの?」 「……粗相をしてなきゃ、いいと思って」 「ははっ! 粗相なんてしてないよ。ただ、普段のきなりが見たら驚くだろうな」 むっとして思わずソファーに座る千博さんの脛を叩く。 くそ、横並びなら片頬でもつまんでやれたのに。 「痛っ! もー、急に叩かないでよ。暴力反対です」 「千博さんが言わないからだろ」 「はいはい。そんなに気になるなら今度サブスペース中の様子撮っておこうか?」 あぁ、ほら……また面倒なことを思いついた。 「いいよ、そこまでしなくても」 「えー? せっかく教えようと思ったのに」 「口で説明すれば良かっただろ。もういい、もう気にしてない」 「……ふふ、分かったよ」 こんなにすぐに引き下がるのも、何か違和感がある。 それでも突くのは気がひけるので、ここは俺も大人しく引っ込んだ。 やっぱり、思いつきで話すんじゃなかった。

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