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5年ほど先の話

「再会を祝して、乾杯!!」 懐かしい声が高らかにそう言い、僕も続けて皆と声を合わせた。 今日は同窓会で中学時代の同級生と久々に会っていた。 卒業してから10年、みんな大人になっているけれどあの頃の面影は残ったままだ。 「やっぱりこの顔触れは安心するねー」 「ね、卒業前にはずっと一緒だったし」 4人掛けのテーブルに座り、懐かしい顔にホッと一息つく。 そこには同じクラスにいたSubが集まっていた。 思春期に出会った同じダイナミクスのクラスメイトには、やはり特別な思いがある。 同じ不安を抱えながら歩んだ最後の1年は、妙に思い出深い。 「皆Collarがあるし、いい顔してるし……なんか幸せだね」 僕の目の前に座るひなたが、皆の顔を見渡しながらしみじみと呟いた。 「そうだな……その、さ。ひなたの襟型めちゃめちゃ似合ってるよな」 「(はじめ)のリボンだって可愛いじゃん、ね?文弥」 ひなたと肇の褒め合いの途中で思わず話を振られ、2人とも素敵だなぁなんて笑って返した。 「そのリボン、パートナーに結んでもらってるの?」 「……あぁ。毎日僕が結ぶから受け取って欲しいって言われてさ」 照れながら話す肇に、僕を含めた3人の顔が緩む。 ツンツンした面が多い肇も、パートナーの前では随分丸くなっているのだろう。 「文弥のとこはどうなの?」 「あー……ふふっ、とっても順調かな。(ねい)も、パートナー出来て良かったよ。心配してたんだ」 隣に座る寧は、数年前にアイドルとしてデビューしていた。 昔から綺麗な顔立ちの上にキラキラしていて、ダンスも歌も真剣に取り組んでいたのを思い出す。 「えへへ、なんとか良い縁があってさ。パートナーとの関係も仕事も、やっとのってきたところかな」 「俺らはテレビ越しに寧が観れるもんな。顔観れるだけ安心するよ」 「もー、連絡もちょうだいよ。みんなとも、こういう場だけじゃなく会いたいんだからさ」 むーっと唇を尖らせる寧を見てまた雰囲気が和らぐ。 変わらない安心感が溢れて、話も途切れず進んでいた。 近況の報告もしつつ、それぞれの思い出話もポツポツと話題になっていた。 時が経つにつれ他のテーブルにいた同級生とも順繰りに話していく。 ……皆なぜか最後に「有明くん雰囲気変わったね」と笑顔で言うものだから、どう受け止めたら良いのやら。 いい意味でと言われるので肯定的に受け止めようとは思うのだけれど…… そんなに目に見えて変わったのだろうか。 今が満たされている実感はあるけれど、それほど変化があったのだろうか。 まぁいいや、なんて気楽に考えながら会の雰囲気に身を任せた。

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