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* 宴もたけなわですが……と決まった文句でそろそろ終わりの時間を迎えようとしていた。 数分前にあさひさんには連絡をしており、近くまで迎えに来てもらうことになっている。 遠くから聞こえる「2次会行く人」の確認に僕らはやんわりと首を振った。 その後4人で目を合わせると、ひなたがそっと話しかけてくる。 「……門限?」 「うん。あと迎え待ち」 「俺も迎えに行くって言われた」 僕と肇がそう答えると、ひなたがキラキラと目を輝かせる。 寧はどこか納得するように頷いていた。 「いいね、タイプ違うの分かる感じ!」 「ひなたのとこはちょっと特殊っぽいけどね」 「うーん……やっぱりそうか。あまりいないよね、尽くして着飾って自分好みに仕立てたいDomって」 俯くひなたと「あっ」と思い出したような顔をする寧。 「いるよ、身近に。『俺以外に顔触らせないで』『俺が一番綺麗にするから』って口説き倒した人」 「……すっげーなその人」 思わず出てしまったような肇の驚いた声。 対照的におもしろーい!と楽しげなひなたという不思議な構図。 寧は相変わらずぽやぽやと話を続ける。 「面白いのがさ、言われてる側は全くそれじゃ靡かないの。ほんっと人によってタイプ違うもんだよねー」 「結局その人たちはどうなったの?」 「……今じゃすっごい信頼しあってるよ。私服も髪型もぜーんぶお任せらしい」 みんなで「凄い」と声をそろえる。 そんな風に話をしていると、遠くからあさひさんが歩いてくるのが見えた。 目が合うと、にこりと笑って片手を上げてくる。 やはりスマートなその仕草は、何年経ってもときめいてしまうものだ。 「ごめん、迎えきた」 「あ、そっかー……じゃあ本当にお開きだね。またね、文弥」 ひなたの明るい声に背を押され、3人に手を振ってからあさひさんの方に歩を進めた。

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