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第4話
広瀬は目を閉じた。
彼に会いたいと思った。
考えることは彼のことだけだった。
あの時のことが繰り返し鮮明に思い出される。
撃ってしまった。血が大量に流れていた。
彼は、裏切った自分を決して許していないだろう。
だけど、ただ、会いたい。もう一度だけでいい。
彼に会って、その存在を確かめたい。
自分が傷つけてしまったあの人。
取り戻すことはできないのはわかっている。許されることはないし、許しを請う資格さえも、ないだろう。
だけど、だからこそ、会いたい。
彼に会い、彼が生きていることをこの目でみたい。
そのためなら、どんなことでもする。傷ついても、死んでしまってもいい。
全てを失ってしまったのだから、今よりも失うことはもうないのだ。
広瀬はもう一度目を開けた。
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