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第9話
先ほどの梔子の彼女から情報が入った白い封筒をもらい、東城は久しぶりに自分の家に帰った。
家は、石田さんが時々訪れて空気を入れ替え、掃除をしてくれているので、住んでいた時と同じ風情だった。
東城は、リビングに入りソファーに腰かけた。
もらった封筒の封を手で切り、中身をローテーブルに出した。数枚の写真と手書きの手紙が入っていた。
手紙は梔子の英語名ガーデニング宛に英語で丁寧に書かれていた。書き手はおそらく、めったに手書きでは書かないのだろう。一文字一文字がくっきりと書かれている。
電子機器で書くとどんなに消してもログやデータの痕跡が残る。この書き手は、手書きが最も安全な情報の伝達手段と判断したのだろう。
英語の文を読む前に、写真を見た。
監視カメラ映像から切り出したような荒い画像に男が数人写っている。どこか、海外のビルのエントランスのようだ。
二枚目の写真に東城は見入った。体温と心拍数がいっきに上がった。
広瀬が写っていたのだ。
無表情で何も見ていない透明な目をしていた。最後に見た時よりも伸びた髪を耳にかけ、形のいい丸い耳を見せている。
それは、どこかのパーティ会場で隠し撮りされたような画像だった。数人の男女が広瀬の近くにいて、それぞれがグラスを持ち、話をしている。そこにいる人種は多様だ。広瀬はその会話の輪に入っているようないないような風情だ。
ここはどこで、彼は何をしているのだろうと考える前に、いつも、ぼんやりした様子で、こんな風にしていた、と東城は思いだしていた。
懇親会などで誰かが気を利かせて一生懸命に話しかけても、彼は、うなずく程度でほとんど返事をせずにいて、相手を困惑させたものだった。
この写真がどこで、彼が何をしているのかは全くわからない。だが、手書きの手紙や他の写真、全てが手がかりなのだろう。
東城は、残りの写真を見て、さらに英文の手紙を読み始めた。
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