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第15話
光森が去って行った後、広瀬は、ビューレンからのメッセージカードを読み直した。
花束は大きな花瓶に活けられ、自分の目の前にある。
広瀬はペントハウスに住み、菊池の会社の実験や観察に協力させられていた。
ペントハウスには監視カメラがあちこちに設置してある。
広瀬の行動は記録、分析されているのだ。
ここから一人ででることはできない。常にスタッフがいて軟禁状態だ。仮に逃げ出せたとしてもパスポートも手元にないので日本に帰ることは容易ではない。
菊池は広瀬にこの状況について説明していた。「君は日本の警察組織の捜査対象になっている。海外にでたことは彼らは把握している。捕まったら大変なことになるよ。わたしが彼らから君を守ってあげるんだ」
そのための監視カメラ、スタッフだ、ということだ。
広瀬は、ここから抜け出す方法を毎日のように考えていた。
チャンスは多くないだろう。
そんな中、昨日のパーティーの場で、ビューレン四世と言う大仰な名前の男がやけにしつこく話しかけてきたのだ。
広瀬の肩や腿を思わせぶりに触れてきた。
彼は、世界中を飛び回り、投資先を探していることを長々と話自慢していた。
一人で回るのは退屈だから、いつも、友人たちを連れて行く。現地でパーティーをしながら楽しく過ごすのだ。今度は、君も一緒にどうだい?と誘ってきた。
しばらく彼の話を聞いていて、広瀬の頭の中で計画が出来上がっていった。この自信過剰の男を利用すれば、軟禁状態から日本に逃げることができるかもしれない。
広瀬は、彼の耳に日本に行きたいと囁いた。
でも、会社が広瀬がアメリカを離れ日本に行くことに反対するかもしれない。ビューレンから上手く会社に言ってほしい。広瀬がビューレンに頼んだことも内密にして欲しい。
願いをかなえてくれたら、日本を案内しますよ、と広瀬は告げた。
一緒に楽しく日本で過ごすことができます。
じっと相手の目を見て話をした。
自分の目がどんな効果をもたらすのか知らないわけではない。
ビューレンは、軽く微笑み、君の望みをかなえるなんて簡単だ、と言った。
彼は、すぐに手を打ったのだろう。投資を必要として必死な光森を操り、広瀬を日本に連れて行く算段をはじめたのだ。
この後、日本に行くまでの間、ビューレンが言い寄ってくるだろう。うまく遠ざけることはできるだろうか。わからないが、そのことについては考えないようにした。
とにかく今は、日本に戻ることだ。それだけが今は重要だ。
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