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第16話
東城は、忍沼拓実と彼の指定した上野のバーで待ち合わせた。
久しぶりに会った忍沼は以前負った顎の骨折や怪我は外見上は全く分からなくなっていた。
海外の富裕層を対象とした形成外科で治療を受けたらしい。ただ、まだ少しだけ話しにくそうだった。
以前より痩せて全体的に骨ばり、目つきが鋭くなっている。
宮田や佳代ちゃんは、このサイバー犯罪者の忍沼に協力には反対していた。
忍沼は前科があり、今だって何をやっているのかわかったものじゃない、というのが彼らのしごくまっとうな意見だった。
だが、忍沼の技術力は必要だ、と東城は判断したのだ。この際、利用できるものは何でも利用するつもりだった。
バーの隅のボックス席に座り、あいさつもそこそこに東城は、梔子からもらった写真を忍沼に見せた。
「あきちゃん」と忍沼は写真を見つめて呟いた。人差し指でそっと広瀬の顔をなでた。
「僕は、あきちゃんを守るって誓っていたのに。約束していたのに」と彼は言った。「結局、あの実験から守れなかったなんて」ごめんね、と忍沼は何度か呟いていた。
それから顔をあげて東城を見た。
「東城さん、この写真があるってことは、あきちゃんの居場所がわかったの?」
「ああ」東城は今までわかっていることを説明した。
コロラドにある菊池の会社。
今度、アンディ・ミツモリという男と広瀬が日本に来るらしいこと。
忍沼は静かに話を聞いていた。
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