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第18話
忍沼がホテルやその部屋、ICカードを手配できたのは、広瀬たちが日本に到着したはずの日の夕方だった。
ホテルの近くの駐車場まで宮田が東城を車で送った。
駐車場では元村融が待っていた。
カジュアルで地味な服装で立っている。小柄だが身体は無駄なく鍛えられ、隙のない暗い目で辺りを見回していた。
その様子を車から見て、宮田が、「元村は、政府の特別な工作員かなにかじゃないですか。警察が逮捕拘留したらこの国の暗部を話してやるとかなんとか言って、起訴を逃れたんじゃないですか」とスパイ小説のようなことを言っていた。
あながち宮田の妄想過多でもないかもしれない、と東城は思った。
車から降りた東城に元村融は忍沼から渡されたICカードを手渡した。
「33階だ。俺は先に、ホテルに入って、部屋のあるフロアに行く。そっちは後から入れ。監視カメラに仲間だとわかる記録はされたくない」
東城は了承した。
ミツモリたちは、ホテルの33階に続きで3部屋とっていた。別々の入り口はあるが中に行き来できるドアがあるタイプだ。
東城はエレベーターをICカードで操作しフロアのボタンを押した。エレベーターには他にも客が乗っていたが下の階で降りて行った。
33階につくと元村融が待っていた。監視カメラの死角になっている位置に立ち、東城にも歩く道筋を手で示した。
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